生まれて初めてだった






家族以外に






特別な“誰か”に






“チョコレート”をあげたいなんて

【St.Valentine's day】
三、それはとても些細なこと
特別な日だったから、私はこの日は朝から頑張って初めての手作りチョコに挑戦していた。






(ホントは、昨日のうちから作っていたんだけど、どうしても気に入らなくて…)






テーブルいっぱいに広げた材料と調理器具。
見やすいところにレシピの載った本を広げて、お気に入りのエプロンをして…。
約束の夕暮れ前を過ぎても、夢中で作ってた。






でも、それもまたあいつの機嫌が悪くなった原因。






現代に帰ることになった四日前―――――


















*




















“くれぐれも!…絶対っ絶対っっ絶っ〜〜〜対っにこっち(現代)には来ないで!”






そうキツく言ったから、いつもなら来てしまう3日前になってもアイツは顔を出さなかった。
だからこそ、アイツは日が暮れた時に戦国に帰った私を拗ねた顔で怒った。
私も、流石に悪かったって思って一生懸命謝った。
まだ、何か言いたげな顔をしてたけど、弥勒様と珊瑚ちゃんの機転でなんとかその場は取り直せた。






「かごめ!なんか甘い匂いがするんじゃが何か持ってきたのか?」






膝元に居た七宝ちゃんが、愛らしい大きな瞳をキラキラ輝かせながら私の顔を覗きこんだ。






「えへへ〜★実はみんなにプレゼントがあるんだ♪」
「ぷれぜんと?忍者食か??」






ぱぁっと笑顔を浮かべる七宝ちゃんの頭を撫でながら、私は持ってきた大きめの紙袋の中身を一つ一つ取り出した。






「かごめちゃん、これ何?綺麗な包みだね〜。」






身を乗り出して取り出した包みの一つ一つに珊瑚ちゃんは、興味津々…といった様子で私に尋ねた。






「みんなに私からのささやかな贈り物よ。」
「贈り物だぁ〜〜〜???」






隣に座していた犬夜叉は、茶々を入れるように目を細めて溜息混じりな声を漏らす。
やはりまだ、帰りが遅かったことに不満があるのだろう。
そんな声に気づかないわけもなく、…かといってここで“おすわり”なんて使ってしまったら元も子もない。






…いちおー…バレンタインなワケだし…






やっぱり、今日は“特別”なんだから!






今日くらい素直に…






取り敢えずみんなへの分を渡して、それから…






犬夜叉には…やっぱり、みんなの前じゃアレだし…






…うん!よし!そうしよう!!






心の中で己を勇める言葉を反芻し、何とか取り直し顔を上げると、目の前には何と犬夜叉の顔があった。
そして、いぶかしんだような表情を浮かべ私に尋ねた。





「なんだ?おめ〜?顔赤いぞ??」
「え!?いや、べっ…別に何でもないよ…。」






明らかに声は上擦っていることは、己が一番にわかっている。
だけど、まさか自分が考えていたことなんて言えるワケもないし…。
未だ不信な顔をしている犬夜叉を制して、私は皆の方へと向き直した。
持ってきた包みの一つ一つを手渡していった。






黄色の動物の模様の包装紙は、七宝ちゃんと雲母に。
赤と白のストライプの包装紙は珊瑚ちゃんと楓ばあちゃんに。
群青のシンプルな包装紙は弥勒様に。






「わぁ〜、かごめ!これ何じゃ??不思議な形をしておるぞ〜!」






中身を見た七宝ちゃんと雲母は、くまの形をしたチョコレートを不思議そうに眺めている。






「それはね、“くま”よ。かわいいでしょう?」
「ね、かごめちゃん。この“ちょこ”…いつものと違って白いんだね!」
「すまんのぅ。かごめ。わしの分まで…」






珊瑚ちゃんと楓ばあちゃんに渡したのは、星型のホワイトチョコ。






…そういえば、ホワイトチョコ。皆に持ってきたの初めてだっけな…






「かごめ様。この“ちょこ”は何処か酒くさいような…」
「うん。それはね“ウィスキーボンボン”っていって…中にウィスキーが入っているのよ。」
「うぃすきぃー??」
「あーっと…お酒よ!お酒!」
「そうですか。いや、かたじけない。」






―――――そうそう。コレも渡さないと…






犬夜叉へと用意したモノと似た包装紙を手にとって、珊瑚ちゃんの袖を引いた。
庵の外まで連れ出し、不審がる珊瑚ちゃんにその包装紙を渡した。






「何?かごめちゃん?」
「あのね。今日は“バレンタイン”っていう日なの。」
「ばれんたいん??」






おずおずと受け取った包装紙をまじまじと見ながら、珊瑚ちゃんは首をかしげた。






「女のコが好きな男のコにチョコを気持ちと一緒にあげる日なのよ。」
「えっ!?」
「これは珊瑚ちゃんの分!弥勒様にちゃんと渡してね!」
「えぇっーーー!!?」






珊瑚ちゃんは、耳まで真っ赤にしておろおろとし始めた。






「で、でもっ…あたしは…」
「いいから…ね!」






そういい残し、私は庵の弥勒様に外に出るように促した。
何事かと首をかしげながら出てきた弥勒様の背を押して、珊瑚ちゃんの元へと誘導した。






「じゃ、頑張ってね!」
「かごめちゃんっ///」






あまりに唐突で悪い気もしたけど、やっぱり同じ女のコとしてはどうしても教えてあげたかった。
邪魔しないように…と私はスっとその場から離れ、庵へと入ると目の前が突然“緋”に変わった。






「いっ、犬夜叉!?」
「……」






何も言わずに、ただ腕を組んでいる犬夜叉の姿だった。
ゆっくりと顔を覗いてみると、先程より更に不機嫌そうだった。






「あのね…実は…」






私は足元の残っている小さな紙袋を手に取った。
犬夜叉へのバレンタインチョコ。
皆へ渡したものとは違う…手作りのチョコ。
包装も自分で一生懸命アレンジした。






「これ…」
「…何が“ばれんたいん”でぇ!今は、他人のコトにちょっかい出してる場合じゃねーだろーが!」






(…え…?)






一瞬、頭が真っ白になった。






「奈落の野郎を追わなきゃなんねーってのに…好いただの惚れただの。」






―――――何…ソレ…??






「浮かれてる場合じゃねーだろ!!」






―――――浮かれてる…?






―――――何、言ってるの?






「…浮かれてなんか……」
「浮かれてるじゃねーか!七宝や弥勒に渡して…あいつらが好きなんだろ!?」
「何…好きって?あたしそんなコト言ってないじゃない!!」
「好きなヤツに渡すんだろーが!」
「そういう日だけど…だからってあたしは!」
「やっぱ、そーなんじゃねーか!」






そっぽを向いて、次々吐き捨てるかのような言葉を投げつける犬夜叉。
私も何が何だかわからなくなってくる。






「ちょっと待ってよ!ちゃんと話…」
「聞きたくねえっ!!!」
「…っ…」






完全に顔を背けられてしまった。
見えるのは、緋の背中。
いつもは温かい背中なのに…今は近寄ることすら出来ない空気を纏っていた。






「わ…かったわよっ!もういいっ!!」






そうして、私はその場から逃げるように立ち去った。






緋の背に背を向けて。






ひたすら走った。






顔を伝う水も






痛む胸にも






全てに






背を向けて






そうして私は、逃げてしまったのだった。











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【St.Valentine's day】

さて、次で終わる“筈”です!
いや、いい加減終わらせないと…

犬とかごちゃんがケンカしたまんまはイヤ…
犬くんが怒ったワケなど、まあいつものアレなのですが。。。
好きなんですよね...こんな犬くんがvv

バレンタイン小説...なのに現在3月!
ホワイトデーの方が近い!!!

急がねば!!!


更新日時 H17.3.5 Sat.0:31

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