楓の村から少し離れた場所。
“犬夜叉の森”と呼ばれるこの地に半妖の少年がいた。






夜も深く、頭上には星々が散らばり大きな月が浮かんでいた。
冷たい夜風が吹きつけ、その美しい銀髪が中に舞い上がる。






(さみぃな…)






犬夜叉は吹き付ける風に身を縮こまらせ、遠くの空を見上げていた。
この少年が“寒い”と思うことなど、ほとんどないことである。
半妖ゆえか、身体のつくりが人間のそれと違う為である。
暑さだの、寒さだの…感じにくい体質なのだ。






しかし今は、感じない寒さにも身を焦がす。
その少年が、身に寒さを覚えてしまったのも、未だ帰らぬ少女を想うゆえだろうか…

【St.Valentine's day】
四、それを一番知っているのは
「…やっぱ…おれが悪いのか…?」






夕方、自分と言い争い、国へと帰ってしまった少女へと言葉を投げる。
そこにいない少女を通り抜け、言葉は風と共に遠く高くへと消え去った。






あの後…
かごめが帰ってしまった後、






いつものように仲間達に怒られるのかと思った。
おれとかごめが言い争い、かごめが国へ帰ってしまうのは、いつもおれのせいだと言われるから。
呆れたように溜息をつかれ、






『お前が悪い!』
『早く謝りに行きなさい!』






そう言われるのだろうとばかり思った。
それが“いつも”だったから…
なのに…誰も言わなかった。






ただ…





おれの顔を見て






哀しそうな表情を浮かべた…






いたたまれなくなって、小屋を飛び出したおれを追ってきたのは弥勒だった。






村を一望できるいつものこの場所―――――






一人になる時に来る場所―――――






その木の根元に弥勒はゆっくり腰を据えた。
先に口を開いたのは、やっぱり弥勒だった。






『奈落を追いたいお前の気持ちも分からなくありませんが…』
『……』
『かごめ様の気持ちを汲むことも大切ですよ。』
『……』






何も答えないおれに構わず、弥勒は懐から包みを取り出した。






『かごめ様が用意して下さったものらしくて、先程珊瑚から頂いたんです。』






その包みを大事そうに抱えながら、弥勒は言葉を続けた。






『お前も知っての通り、好いた者への贈り物だそうですな…』
『…だから何だよ。』






思わず自分の真下にいる弥勒に視線を移すと、弥勒もまた真っ直ぐにおれを見ていた。






『知ってますか?かごめ様が誰を好いているか?』
『なっ…』
『知ってますか?』
『…ンなの…知らねぇよっ』






何もかも見透かしそうな深い瞳から、咄嗟に目を逸らした。
モヤモヤした気持ちが溢れてくる。
さっきの…かごめのあいつらに対する笑顔が恨めしくて






辛くて






苦しくて






『乱暴で我儘で…ケンカ早くて、怒りっぽくて』
『!?』
『誰よりも嫉妬深くて、今日もヤキモチ妬いて、怒らせて』
『んなっ』






飄々とした面持ちでそんな台詞を吐く法師を恨めしく思って、文句のひとつも言ってやろうと思った瞬間…
弥勒の表情が一変した。
酷く真剣な瞳。






『…っ…』






言葉を飲み込んだ途端、鋭く尖った瞳が優しい色を示した。






『それでも、あの人は…そんな奴がいいらしい。』
『……』







ひとときの沈黙―――――






『…何で、いつもみてえに言わねえんだ?お前も、あいつらも…』
『何がです?』
『だからっ!“お前が悪い!謝ってこい!”ってヤツだっ。』






すると弥勒は、ふっと表情を緩めた。






『かごめ様の気持ちは、お前が一番よくわかっているでしょう?』






その瞬間―――――






何かがはじけた―――――






モヤモヤした心が晴れ渡ってゆく。
仲間達に怒鳴られるたびに吐く台詞。






“かごめの気持ちを考えろ”






そう言われる度に言った台詞。
嫉妬混じった台詞。






自惚れかもしれねえ






おれだけがそう思ってるだけかもしれねえ






それでも






おれはそう思ってるんだから仕方ねえ






“おめえ達に言われなくたって、かごめのことは、おれが一番知ってんだからなっ!”






漆黒の着物を纏った法師の視線の先






一陣の風と共に、翔けてゆく緋の衣






彼が目指すは






彼の少女






その笑顔に逢いに






『行ってこい、犬夜叉。ちゃんと2人で帰ってくるんですよ。』






少年もまた、その背押されて…











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【St.Valentine's day】

『次で終わる“筈”』
…と前項で申したにもかかわらず、まだ続く模様…

すいませんっ!!!

どうしても犬くんの方も追いたくなってしまいました

お許しを…

次こそ…
と言うのはやめておきましょう。。。

しかし、最後はやっぱり犬かごvvvを!!!


更新日時 H17.3.20 Sun.23:55

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