日本中のカップルが色めき立つこの日















12月24日















【クリスマス・イヴ】
一、疑問だらけのクリスマスイヴ



















街を見渡せば、あちこちにいる幸せを絵に描いたようなカップル。
腕を組んで歩いていたり、肩を抱いて歩いていたり。
今年最低気温をマークし、夜には雪が降るだろうとまで予報されているにも関わらず、寒さを全く感じさせない雰囲気。










日本人はイベント好き。
しかもなぜかクリスマス当日である25日よりも、前日である24日のクリスマスイヴが大好き。











キリシタンでもないのにと思う人も少なからずいると思うが、そこはあえて突っ込まないようにする。

夏祭りに匹敵するほどの街の賑わい。











都心のあちらこちらには、綺麗に飾られたイルミネーションが夜の訪れを待っている。
太陽が沈み、闇色に染まるその時の光景が今から楽しみである。










その夕暮れまであとわずか。

クリスマスイヴだというのに、色めくどころか緊張に固まっている人物がひとりココにいる。










多分、おそらく…いや、確実に。











この人物が日本中で一番幸せ者である。











少なくともこの状況を知れば、日本中の女性が羨み、黄色い声をあげるに違いない。










まあ、尤も…ついでに恨みも買うだろう。











それはもう確実に。










だが、世の女性の多くは、恨みを買ってもいいから代わりたい!羨ましい!と叫ぶことだろう。










(一般的にはそうでしょうよ…)










目の前の視界が次々と変わる車窓を見ながら、ふっとキョーコは溜息をついた。










(今日はイヴよ!クリスマスイヴ!それなのに…なんで…)










左隣をちらっと見ると、端正で優美な顔がそこにある。
濡れたような黒茶髪に、形の良い黒瞳と女性が羨むほどの長い睫。
本日も申し分がない完璧な容貌。










「ん?どうかした?最上さん。」

「いえ。何でもないです。」










本音を言えば、“「どうかした?」じゃない!”と叫びたい気分のキョーコ。
何でもないと言った手前、二の句に困ったのだが、やはりここは自分の抱えている疑問を解消しようと、ようやく口を開いた。










「あの〜…敦賀さん?」

「何?」










蓮は、ちらりとキョーコの顔を見る。
幸い赤信号だ。わき見運転にはならない。
そんなことをぼんやり思いながらも、息をひとつ飲み込んだ。










「今日はクリスマスイヴですよ?」










ようやく言えた。という達成感がキョーコの脳内を支配したが、次の蓮の反応で全てが泡になる。










「うん。そうだね。」










あまりにも淡々とした返答。さすがのキョーコも呆気にとられてしまった。










「そうだねって…それはそうなんですけど…他に何かないんですか!?」










“天下の敦賀蓮がクリスマスイヴに、なぜ、私なんかと一緒にいるんです?!”











と叫ばんばかりの形相で、攻め立てるキョーコ。










そう。











キョーコにはココが一番疑問だった。

そもそも、どうしてこのような事態に陥ったかというと…






















          *






















クリスマスイブもキョーコは仕事だった。
まだ新人のキョーコにとっては、イヴに仕事があっても特に困ることはない。
むしろ喜ばしいことだった。










もっとも、イブ自体がキョーコにとっては何の意味も持たないイベントなのだが…

仕事が終わり、さて帰ろうかという時に、突然携帯が鳴った。











ディスプレイに映った“非通知設定”で誰からの電話からかあらかた予想はしたのだが、正直信じられなかった。

先ほどの番組収録でも“イヴ”騒ぎだったし、イブ絡みのネタばかりだった。











自分自身が関係なくとも、脳内に“イヴ”がインプットされていたキョーコは、きっと事務所の誰かだろうと高を括った。

しかし、耳に届いた声は聞きなれた彼の声だったのだ。










『これからのご予定は?』










開口一番の蓮の言葉はコレだった。











心の中で“むしろ貴方のご予定は?”とキョーコは疑問に思ったが、その問いはなんとか喉の奥に飲み込んだ。










『今日はこれであがりです。予定はないです。』










ありのままに正直に答えた。
普通ならば、“予定は?”と聞かれた時点で、それなりの期待を持つものだが、キョーコの色恋細胞はすでに壊死している。
ゆえに期待はおろか、その言葉の意味さえ理解していなかった。










『じゃ、今夜俺に付き合ってくれる?』

『はい?』










今日が何の日か分かっているのだろうか?この人は?…と思いつつも、間抜けな声しか出ないキョーコ。










『嫌?』

『そんなことないですけど…』










これもキョーコの素直な気持ちだった。
イヴなのに…と思う気持ちがあったが、だからと言って断る理由もない。
何か用事があるのかもしれない…とキョーコは、自分の中で自己完結して納得した。










『じゃ、すぐ行くからちょっとだけ待ってて。』

『はい…っというかどこで待ってれば……あれ?』










聞く前に携帯を切られてしまった。
さて、どうしたものかと思案していると、突然肩を叩かれた。










「つ、敦賀さん!?」

「やあ。お待たせ。」










今さっきまで携帯で話をしていたのに…と軽く混乱を起こしているキョーコは、意味不明な言動をしている。
携帯電話と蓮の顔を交互に見ながら、口を池の鯉のようにパクパクさせ、あまつさえ指差しまでしている。










「こういうこと。」










右手に持っていた携帯電話をキョーコの眼前に出すと、蓮はとびっきりの笑顔を見せた。










(や、やられたわ…)










要は、蓮はキョーコの後ろを歩きながら、わざわざ携帯を使っていたというワケだ。
悪戯のようなものだろう。










「すぐ行くって言ったでしょ?」

「はい。確かに…」










騙されたというのはオーバーだが、どこか納得できない表情を浮かべているキョーコに、蓮はごめんごめんと謝りながら頭を撫でた。










“子供扱いしないでください!”










と普通なら食ってかかりそうなところだが、キョーコはなぜか蓮に“子供扱い”されることを厭ってはいない。
むしろどこか心地よささえ感じている。











そんな自分を不思議に思っているのだが、それが何であるのかは、まだ理解していなかった。

そして、促されるままにキョーコは蓮の後をついていった。






















Next→ ニ、イヴ×二人=デート?





















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【あとがき】



クリスマス小説です。
ちょっと長いのですが、お付き合い頂けたらと思います。

当面はこちらの更新になるかと…

原作はとても楽しそうなパーティーなので、
こちらでは思いっきり蓮キョでいきますvv

原作のパーティーがすごく楽しみですvv



作成 2007/11/20
更新 2007/12/19 21:53

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