【クリスマス・イヴ】
二、イヴ×二人=デート?




















そして現在に至る。










「他にって?何が?」










全く心当たりはありませんという表情を浮かべながら、軽く言い放つ。
しかし、キョーコも負けていない。










「だから!今日はイヴですよ!クリスマスイヴ!普通…恋人とかそういう人と過ごしませんか?」

「でも俺は恋人なんていないし。」










ピシャリと告げられ、さすがに何も言えなくなってしまうキョーコ。











「だったら家族や友人と過ごされたら?」と思ったが、その言葉は飲み込んだ。
蓮の口からも、その周りの人達からも“家族”については一度も聞いたことがない。










キョーコが知らない事実だが、先日来日したクー・ヒズリが蓮の実父だ。
蓮の父親であると同時に、クーはキョーコにとって“父さん”である。
血縁関係があるワケではないのだが、キョーコはクーが認めた“もうひとりのクオン”。










自分の子供時代のクリスマスを思い返すと、“家族”で過ごした覚えなど一度もなかった。
ゆえに、キョーコには到底言えないことだった。










“家族と過ごされたら?”とはどうしても言えなかった。










友人関係については、マネージャーである社の情報によると蓮の交友関係は“広く浅く”がモットーらしい。










(敦賀さんらしいけど・・・それってつまり・・・)










親しい友人がいないということになる。










ある意味では、社がマネージャーとはいえ友人にあたるのだろう。
蓮は社を本当に信頼しているのだから。










(私にはモー子さんがいるけれど…)










その親友である奏江も今日は仕事だった。
彼氏がいないキョーコは、奏江とクリスマスを過ごしたいと思っていたのだが、それは脆くもあっさりと奏江の言葉ひとつで両断された。










『ごめん。私24日からロケなのよ。』










と一言でバッサリ。










仕事だから仕方ないと思い、あらかじめ用意しておいたプレゼントを昨日のうちに渡しておいた。
奏江は驚いていたが本当に喜んでくれたので、キョーコはなんだかんだそれで満足しているところがあった。










“クリスマスプレゼント”










ある意味でタイミングがよかったとも言えるとキョーコは、自分の鞄の奥にあるものを見ながら思った。










(まさか…こんなところで会えるとも思わなかったし…)










「…上さん?」
「……」

「最上さん!」










外界との接触を完全にシャットダウンし、自分の世界に入り込んでいたキョーコは、突然の呼びかけにハッとした。










「あっ、は、はいっ!」










声の主は心配そうにキョーコの表情を伺い、ようやく気がついてくれたことを確認すると柔らかく微笑んだ。










(う…わぁ…)










蓮があんまり柔らかく笑うので、さすがのキョーコもつい見入ってしまった。
だが敦賀蓮という男も、何だかんだ鈍感なので、キョーコのそんな様子には全く気がついていないようだった。










「どっか行きたいとことかある?」
「え?」










(行きたいところって…これじゃ、ホントにデートみたいじゃない…)










“いやいや、敦賀さんはそんなつもりで自分を誘ったワケじゃない!”
と頭の中で何度も反芻させながら、キョーコは首をブンブンと振った。










「どうかした?」
「あ…いや、何でもないです。」










「それで、どこか行きたいとこはないの?」
「急にそう言われても…」










どうしようと思考を巡らせながら一生懸命に考えるキョーコ。










「ゆっくり考えてもらっていいよ。もっとも、この時間だからどこでも大丈夫…と言えないのが残念だけどね…」










本当に残念そうな表情を浮かべる蓮を見て、キョーコはますます困ってしまった。










(どうしよう…っていうか、なんで敦賀さんが残念そうな顔してるのかしら?)










そんな顔は滅多にしないのに…と心配になり、そっとその表情を覗くが、キョーコの視線に気がついた蓮は、ふと笑顔をこぼした。
引っかかりはあるものの、蓮の瞳は“行きたいところが決まったら教えてね?”と暗に告げているので、キョーコは先の要望である“行きたいところ”を考えることにした。










(敦賀さんは優しいから、きっと私がひとりぼっちのイヴを過ごさないように気を遣ってくれたのかも…)










普段は意地悪だとか、嫌味だとかを平然とぶつけられるのだが、蓮が本当はとても優しくて温かいヒトだと知っているキョーコは、せっかくこうして誘って貰えたのだのだから、行きたいところに連れてって貰おうと決めた。










「そういえば…」










蓮に聞こえるか聞こえないか程度の小さな声をあげて、キョーコは以前事務所で見た雑誌を思い出した。

例の如く、クリスマス特集で飾られた若い女性向けの雑誌だった。











その雑誌で一番大きく取り上げられていたのが“クリスマスイルミネーション”だった。
要は、カップルのデートにおすすめなイルミネーションが綺麗なおすすめな場所というやつだ。










イヴにデートという形には興味がなかったが、その雑誌に載せられていたイルミネーションはとても綺麗だった。
デートに興味はなくとも、生来のメルヘン思考を持つキョーコにとって“キラキラ”は好物…いや、とても好きなものだ。
一番大きく取り上げられていたので、きっとすごくロマンチックで幻想的なのだろう。










「きっと綺麗だろうなー。」
「何が綺麗なんだい?」

「へ?何がです?」
「何って、君が今言ったんじゃないか?“きっと綺麗だろうなー”って。」
「えぇっーーー!?」










想像上でつぶやいていたつもりが、どうやら実際に口にしていたらしい事を知って、キョーコは顔をカァーっと赤く染めた。
独り言…というか想像していたことを知られてしまったかもしれないことが恥ずかしい。










本当に面白いコだね…と蓮は笑ってみせた。もちろん悪い意味でも意地悪な意味でもない。
当のキョーコは、自分の言動が恥ずかしくて蓮の言葉は耳に入っていなかったようだが…










「それで、綺麗って何?」
「あ!…えっとですね…」










キョーコは蓮に言われるがままに、雑誌で見たクリスマスイルミネーションのことを話した。
とても綺麗な場所があるということを…










「うん。じゃあ、そこに行こうか?」
「え?でも・・・きっと人が多いですよ?…人混みは避けた方がいいかと…」










まだまだ新人の自分ならともかく、蓮は超絶な人気を誇る俳優だ。
そんな人溜まりの場所なんかに顔を出したら、パニックになりかねない。











まして、今日はクリスマスイヴ。
そんな日に、自分と一緒にいては…とキョーコは口早に抗議する。










「大丈夫でしょ?イルミネーションは夜なんだし、人が多いなら逆に気付かれやしないよ。」










なんてあっさりと否定するものだから、キョーコとしてはたまったものじゃない。










(このヒト…自分が芸能人…しかも、芸能界一いい男と言われている自覚あるのかしらっ!?)










もしも誰かに見つかったらパニックだけでは済まないのは目に見えている。
運悪く週刊誌なんかに見つかれば、一体どんな事態に陥るかなんて考えるまでもない。










「洒落になりませんよ!もし誰かに見つかったらどうするんですか!?」
「その時はその時。一応変装くらいはするし…あ、もちろん君もね?
 君も随分顔を知られている筈だから」










あくまで大丈夫と言い張る蓮。
何度も説得に応じるが、どうにも折れてくれそうにないと判断したキョーコは、大きなため息をついた。
それをキョーコの白旗宣言だと受け取ったらしい蓮は、満足そうに微笑んだ。










「交渉成立だね。どうせなら行きたいところに行かなくちゃ。デートなんだから。」











「……?」










(…今、このお方は何とおっしゃったのかしら…?)










聞き捨てなら無い台詞をいとも容易く、且つさらっと言葉にした蓮の顔を見上げるキョーコ。










(デート…とか言わなかった?今?幻聴かしら?)










確かめるべく、きちんと聞き返そうとしたがそれは叶わなかった。
なぜなら、超が付くほど全開のスマイルを浮かべていたからだ。










(へ…下手なコトは言わないのが…長生きの秘訣…)










あまりに恐ろしくて、キョーコはそれ以上何も言えなかった。










(でも…なんでだろ?なんか嬉しい…)










その嬉しさがどこからくるものなのか、キョーコは分からなかったが、心に温かいものが溢れる感覚を感じていた。
それは表情にも自然に現れ、それを見た蓮が、先程とは違うとても優しい笑顔を浮かべていたことにキョーコは気が付かなかった。











「夜はそこに行くとして…さて、準備に参りますか?」
「準備…?」










一体何の準備なのかと怪訝な顔をするキョーコの頭をひとつ撫でるように叩くと、
「君にとっては夢の世界…かな?」と一言だけ告げた。






















Next→ 三、夢の世界への扉





















******************************************************

【あとがき】



第二話ですv
予定していたよりも長くなりそうで…
24日に間に合わなそうな気がします。
毎日アップしてもちょっと無理かもしれんです…

蓮さんとキョーコちゃんしか出てこないのに長くなるなんて…
この更新が終わるまで[尚ちゃん日記]は停滞します(汗)

ごめんなさいm(__)m



作成 2007/11/20
更新 2007/12/21 21:55

******************************************************

戻る Galleryに戻る Homeに戻る
ページTOP