【クリスマス・イヴ】
三、夢の世界への扉




















車を走らせること20分。
都内の高級店が立ち並ぶ一角で、蓮は漸く車を止めた。










「着いたよ」
「……………?!」










そこはかなり大きなブティックだった。
セレブ御用達…という名がしっかりと命名されていそうな高級な店構え。
流石のキョーコも唖然とした顔をして、店の前で立ち尽くしていた。










「どうした?」
「い、いや…高そうなお店だなって…」










元々超庶民のキョーコには、まるで別世界であり異空間。
その空気を吸うのもおこがましいと思えるほどの立派過ぎる佇まいに息を呑むしかなかった。

しかし、そんなキョーコの心情を知らず、蓮はあっけらかんと応える。










「何が?」
「いえ、いいんです。気にしないでください。」










(そう…だったわ。このヒト“並の人間”じゃなかった…)










人気俳優の彼にとっては、こんな場所などごく普通で当たり前なのだろうと、キョーコは価値観の違いに衝撃を受けつつも、普段はあまり雰囲気に出ていないせいか、どこか納得したような表情を浮かべた。










(十分セレブなんだけど…敦賀さんて意外と庶民的というか…なんかちょっとズレてるのよね)










失礼極まりない言い分だということは、キョーコも十二分に理解はしていたのだが、これまでの蓮の言動を考えると頷ける部分も少なくはない。










身につけているものは、確かに高級品である。
住んでいるところも高級マンション。
たが、食事だけは庶民のソレに近い。










元々蓮は食事に興味がない。それも一因なのだろうが、面倒だからと携帯用健康食品やサプリメントに頼ったり、コンビニで寄りにもよっておにぎりを購入してみたり、その辺のファミレスに入ったりとかなり庶民の感覚に近い。

たぶんこんなところに所帯臭さを感じているのかもしれない…とキョーコは心の内でこっそりと思った。










「でも敦賀さん…大丈夫なんですか?…その私と一緒じゃ…」
「大丈夫。ここは芸能人御用達のブティックなんだ。店員の教育も行き届いているし…心配はいらないよ。」










困惑しているキョーコを安心させるように、優しく語りかける蓮。
キョーコもそれに納得し、案内されるまま店内へと足を踏み入れた。










「う…わぁ〜〜…すごいっ!」










そこはまるで別世界のようだとキョーコは素直に思った。
よく磨かれた艶やかな床と上品な照明。華やかでありながら、どこか落ち着いたような雰囲気はとても安心できるものだった。










「お待ちしておりました。敦賀様。どうぞこちらへ。」










二人を出迎えたのは、人の良さそうな笑顔を浮かべた初老の男性。
物腰も柔らかく、纏う空気は親近感があり、この店そのものをイメージし具現化したような人だ。










店内の奥へと進み、いくつかあるうちのひとつの部屋へ案内された。
まさしく接客用…と思える豪勢な部屋の内装を、もの珍しそうに見回すキョーコ。










「さっき連絡した件、ご用意いただけましたか?」
「はい。何点かご用意させていただきました。すぐにお召しになられますか?」











「ええ。お願いします。」

「最上さん。」
「へ?」










呆然と室内を見回していたキョーコの肩を叩く蓮。
突然肩を叩かれて驚いたキョーコは、つい面白い悲鳴をあげてしまった。










「では、京子様はこちらへ。」










(え?…今“京子”って言った??)










「…は、はい。あの…どうして私の名前を…?」










初対面の男性に名前を知られていることを不思議に思ったキョーコは、恐る恐る尋ねると、男性は「これは失礼いたしました」とひとつ謝罪をすると、その理由を説明した。










「当店は、LMEの俳優やタレント様にご愛顧いただいております。
 ですから、京子様のことも存じ上げています。DARKMOONの未緒…毎週楽しみにさせて頂いております。」
「あ、い…いえっ!」










ここで突然“未緒”の話題が出されるとは思ってもみなかったキョーコは、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にさせた。
初老の男性は、にっこりと微笑みながらキョーコを別の部屋へと案内した。

先程の来客用の部屋とは違い、今度はシンプルなホワイトで統一されていた。
一体ここで何をするのだろうかと思考を巡らせるが、皆目検討がつかないキョーコは戸惑うばかりだった。










「あの…一体何をするんですか?」
「おや。敦賀様から伺っていらっしゃらなかったのですか?」
「はい。突然連れてこられたので…」










本当に困っているようなしぐさと表情をするキョーコ。










「敦賀様からのご依頼は、京子様を“変身させてあげて”とのことです。」
「変身!?」










「もっと分かりやすく言い直すと“変装”ですね。」
「そういうことですか…あーびっくりした…」










心底びっくりし安心したというキョーコの感情が見えた、初老の男性はふと笑みを零した。










「それでは、はじめましょう。」










初老の男性がパンパンと二度手を鳴らすと、奥から数名の女性が現れた。










(な…何っ!?)










「このコを変身させてあげればいいのね?」
「まぁーvv 綺麗なお肌vv お化粧のノリが良さそうv」
「髪はどうしましょうねぇ?ウィッグでもつけちゃう?」
「けっこう細いのねv 足も長いし…なんでも似合いそうvv」










次々と現れた女性達が口々に何かを言っているのだが、キョーコは突然その女性達に揉みくちゃにされてしまったので、もう何が何だか分からないと目を廻していた。










「さぁ!はじめましょうか!」










一番背の高い女性が高々と“始め”のコールをかけたと同時に、キョーコは女性達の熱気に当てられそうになるのを我慢しながら、されるがままの人形状態となってしまった。























Next→ 四、素敵な魔法





















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【あとがき】



第三話です。
日付がすっかり変わってしまいました…
面白いくらいの残業だったので…
もしも今日も通って下さった方がいらっしゃったら…
すみません…

第四話も下手すれば今日アップすることになるでしょう。…
一日二回アップなんて…初の試みですね(笑)

しかし、一体何話になるのか検討つきません(汗)



作成 2007/12/17
更新 2007/12/22 02:41

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