【クリスマス・イヴ】
四、素敵な魔法




















そしておよそ一時間後。









「うわぁ〜〜〜〜!スゴイっ!」









一面鏡貼りになっている部屋に、キョーコの感嘆の声が響いた。
キョーコは鏡に映った自分の姿を見ながら、信じられないといった顔で何度も何度も確かめた。









「すっごいですっ!!すごく可愛いメイク!このドレスも本当に素敵です!」









頬のチークがなんとも可愛いらしいのだが、女性らしさも兼ね備えた色味に仕上がっている。
アイメイクは、ナチュラルな暖色にくっきりとしたラインが引かれていて、実年齢より少し上くらいの印象を持たせている。
唇はピンクパールの潤いあるルージュ。これが何とも魅惑的だ。










少女らしさと女性らしさが合わさる、絶妙のバランスのメイクだった。

明るい栗色の髪も、全体的にしっとりと纏められ、後ろ髪は数本のエクステで飾られている。
耳には、十字の小さな銀のイヤリングが小さく揺れていた。









纏っているのは、赤いシンプルなドレス調のワンピースだった。
キョーコの細い身体が映えるタイトな作りでありながら、スカートの部分はすこしゆるやかである。
胸元で柔らかく結ばれている細いリボンが、とても可愛らしい。









あまりに完璧すぎる仕上がりに、背後には花が舞っているのではないかというくらい、キョーコは歓喜していた。
キョーコのメイクを手がけた面々は、その大げさなほどに喜ぶ姿に、満足そうに見つめていた。









「えぇ。とっても綺麗よ。京子ちゃん。それにしても、ここまで変わるなんて、私達もびっくりしたわ〜」
「そうよね〜肌がツルツルだから、化粧のノリも良いし、とても化粧栄えする容貌だから、メイクのし甲斐があるわ!」









手を合わせながら、己の仕事を全うしたことを喜び合う女性達に、キョーコは深々と頭を下げた。









「こんな素敵な魔法をかけて下さって、本当にありがとうございます!」









この時代に珍しい礼儀正しいキョーコに、一同は微笑みで応える。









「それじゃ、せっかく可愛くお姫様に変身したんだから、王子様にも見せてあげなくっちゃね?」









一番年長の女性が、ウィンクをしながら部屋の入り口のドアを一気に開く。









「え……?」









ドアの外に居たのは、もちろん蓮。
突然前置きもなく開かれたドアに驚いたようだったが、キョーコの姿を見るなり蓮は時間が止まったかのように、微動だにしなかった。









(な、な、な……………ま、まだ心の準備ができてないのにーーーーっ!!!)









キョーコはあまりの恥ずかしさに俯いてしまった。









「あ…えっと………最上さん?」









先に口を開いたのは蓮だった。少し口元を押さえているのは、キョーコの姿に驚いたことと、それに緩みそうな己の顔を抑える為だったのが、当の本人であるキョーコは自分の事で一杯一杯で、全く気が付かなかった。









「は、はい。」









恥ずかしそうに顔を赤らめながら、ゆっくりと顔を上げるキョーコ。
そこには、とても優しい笑顔を浮かべた蓮がいた。









「よく似合っている。…とても可愛いよ。」
「んなっ…」









柔らかな笑顔のままで、さらりとそんな台詞を言ってしまえる蓮に、キョーコは更に頬を朱に染めて抗議を上げる。
周りに居たメイクや衣装を着せてくれた女性達も頬を染めながらも、そろそろと部屋から退出していった。
二人のその世界を壊さないようにと、そっと。









「そ、そんな台詞……さらっと言わないでくださいっ!!」
「どうして?」









ん?と首を傾げるような仕草を見せる蓮に、キョーコは、やっぱりこの人は天然でこういうこと言えちゃうのねと、小さい息を漏らした。









「は、恥ずかしいからですよ……」
「本当に可愛いと思ったから言ったんだけど。」









(ほ、ほんとうに天然なのね!?このヒト!は、恥ずかしいっ!!!)









キョーコは顔が熱くなるのを感じながらも、何とか平静を取り戻そうと必死に心を落ち着けようとジタバタしながらも、そろっと蓮の姿を盗み見る。









黒革の品のあるジャケットの中に、柔らかい白のニット。
ストレートの黒いパンツが、ただでさえ長い蓮の足を更に長く見せている。

耳には、普段は滅多につけることの無いピアスをして、首からはいつも身に着けているアクセサリーを下げていた。









(な、なんか…ただでさえ非の打ち所も無いヒトなのに……更に……)









「つ、敦賀さんこそ……すごくお似合いで……、その…格好いいです……」

「………」









(な、なんで何も言わないのかしら?私…何か変なコト言ったっけ?)









長い沈黙に耐え切れなくなったキョーコは、もう一度蓮の顔を見上げた。









「あの、敦賀さん…?」
「……あ、…いや、何でもないよ。…ありがとう。」









少し歯切れは悪かったが、蓮は小さな声でお礼の言葉を口にする。
その顔はほんのり赤く見えないこともなかった。









(あれ…?なんか…カオが……赤いような…?気のせいかな?)









ゴホンとひとつ咳払いをすると、蓮はもう一度柔らかい笑顔を見せて、キョーコに向かって手を伸ばした。









「じゃ、行こうか?」
「は…はい。」









伸ばされた手をそっと取り、二人は部屋を出た。
そして、二人を案内してくれた初老の男性が店内で待っていた。









「お疲れ様でございます。敦賀様。そして京子様。」
「今回は無理を言ってすみません。ありがとうございます。」









蓮は深く一礼すると、キョーコもそれに倣って頭を下げた。









「本当にありがとうございます!」
「いえ、とんでもありません。こちらも楽しませて頂きましたし。さぁ、では此方へどうぞ。」









男性に案内されたのは、少し広い真っ白な空間だった。
だが、その周囲にあるのは見覚えのある機材ばかりだった。









「これって、撮影用の機材?」
「ええ。その通りです。」









かなり沢山の証明ライトや、見るからに高そうなカメラが何台も用意されていた。
中央にある少し高い台の上には、真っ赤な薔薇や散りばめられていた。あそこにモデルが立ち、写真を撮るのだろう。










そして、隣に居た蓮がその舞台の上にあがる。
あまりに似合いすぎているその立ち姿に、キョーコはしばし魅入っていた。









「最上さん。こっちにおいで。」
「え?」
「ほら早く。」









戸惑いながらも、蓮に手招きされたキョーコは引き寄せられるように舞台へとあがる。









「あの…一体…?」
「お仕事………のようなものだよ?」
「はぁ…」









今いち理解できなかったが、キョーコが舞台にあがった瞬間、数多の照明ライトが点灯され、キョーコと蓮をまばゆい光で照らす。









「ま、まさか……」









一瞬血の気が引いたように青ざめるキョーコは、慌てた様子で蓮を見上げる。
すると、蓮は意味ありげな笑顔を浮かべた。









(う、嘘つき…紳士スマイル……)









キョーコは、今自分が予想した最悪の想像が的中したことを察した。
いつもは必要以上に鈍いのだが、蓮のこの笑顔が全てを物語っていた。




















Next→ 五、聖なる夜に記念の一枚を





















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【あとがき】



第四話です。
夜中に更新して、こうして再び更新!
一日一回のつもりが、日付的には二回ですね(笑)

それにしても終わりが見えない…
下手に間延びしてしまい…うーん…

次のアップは明日になるでしょう!何事もなければ!!



作成 2007/12/17
更新 2007/12/22 21:30

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