【祈-PRAY-】 Side.K  〜 ACT.148 バレンタインXXXX 続き妄想 〜
「……ちゃん。京子ちゃん!」
「え……?」



何度か呼ばれていたらしい名前に振り向くと、私の顔を不思議そうに覗き込む百瀬さんがいた。



「ご、ごめんなさい、百瀬さん」
「ううん。それは良いんだけど……どうかしたの?」
「え?」



身体をきちんと百瀬さんに向け、お詫びに深く頭を下げると、彼女は気にしなくて良いとばかりに手の平を左右に振り、そしてもう一度私の顔をじっと覗く。
もしかしてまた死相でも浮かんでいたのかと焦ったが、百瀬さんはただ不思議な顔をして小首を傾げ、私が予想していない爆弾をいともあっさり投下した。



「京子ちゃん、ずっとおでこを気にしているみたいだから」
「……っ!!!?」



思わず額を両手で押さえると、ますます心配そうに私を覗く百瀬さん。



「どうしたの?おでこどうかした?」
「な、なななな、何でもございませんっ!!」
「何でもないって感じじゃないよ?頭痛いとか?」
「ち、違いますっ!!!」



(いやぁあああああ〜〜〜〜!!そんなにじっと見ないで下さいぃいいい〜〜〜〜!!!)



百瀬さんは単に私の心配をしてくれているだけだと思うけれど、そこまでじっと探るように見られると見透かされそうで恐い。
それにしても私ったら何してるのよ!
また、ついうっかり額なんて触って……こんなの敦賀さんに見られでもしたら、言い訳のしようがないわ!



「具合悪いならちゃんと言ってね?」
「はいっ!言います!ちゃんとその時は百瀬さんにきちんと言いますから!」
「うん。でも本当にどうかしたの?」



本当に何でもないと伝えようとしたその時、天の助けの如く、緒方監督の声が響いた。



「次、美月と嘉月のシーンいきます!百瀬さん入って下さーい!」
「あ、はい!今いきます」



監督に呼ばれた百瀬さんは、駆け足でセットへと向かう。これ以上うまく誤魔化す自信がなかったので正直ほっとした。
けれど、ほっとして視線をセットに向ければ、そこには監督と何やら話をしている敦賀さんの姿が飛び込む。



(うっ……み、見ないようにしてたのに……)



アレ以来、恥ずかしくて敦賀さんの姿を直視出来ず、なるべく見ないようにしていた。
だってほら、見たらまた思い出しそうだし。
思い出したらまた変な動悸でおかしくなりそうで。



(で、でも……それは別に余りの事に驚いたから出る症状であって、別に他意がある訳じゃないわ!そうよ!だって仕方ないじゃない!お、おでこにキ……だなんてっ!そんな事今まで一度たりともされた事ないし、寄りにもよって敦賀さんだから余計に!)



「キョーコちゃん、キョーコちゃん!」
「え?や、社さんっ」



またもや呼ばれていたことに気づかなかった私。
もう本当にどうかしているわ……。



「この次のシーンだったよね。キョーコちゃんは」
「はい。そうですね」
「ところで、蓮と何かあった?」
「い、いえっ……と、特にこれと言って何かは……」



ニコニコ笑顔で問う社さんは、少し身を屈めて私を覗きこむ。
どうして皆して私の顔を覗くんですか!?



「何もないんだ?あれぇ〜……蓮の機嫌が良かったからてっきり何か良い事でもあったのかと思ったんだけどなぁ」
「機嫌って……敦賀さん。機嫌が良かったんですか?」
「うんうん。楽屋から戻ってからというもののねぇ〜。だからキョーコちゃんが何かしてくれたのかなって」



本当に楽しそうに笑う社さん。
敦賀さんの機嫌が良いからってどうしてそんなに楽しそうなんですか!
というか、何かって……何かしたのはむしろ敦賀さんですからっ!



「何かって……私はただ敦賀さんにバレンタインの……その……」



(いけない!何だかとってもいけないわ!いえ、待って。私はただプレゼントをお渡ししただけよ!そ、それだけなのに!)



「え?プレゼント?もしかしてチョコあげてくれたの?」
「ち、違います!敦賀さんにはチョコではなく、ワインゼリーを」
「ワインゼリー?どうして?バレンタインなのに?」



心底不思議そうに首を傾げる社さん。その仕草はまるで女子高生というか、乙女のように可愛らしく……じゃなくて!



「つ、敦賀さんにはチョコじゃない方が良いかと思って……有り得ない位、色々な方から貰うでしょうし。私までチョコを贈ってしまっては迷惑を掛けてしまいそうで」
「まぁ、確かに尋常じゃないくらいに貰ってはいるけど。ん?」



そこまで言いかけて社さんは何か驚いたように目を見開いて固まった。
あれ?私、何か変な事言ったかしら?



「ね、キョーコちゃん。俺とか他の皆にはチョコだったけど、蓮だけそのワインゼリーだったって事?」
「はい。そうですけど」
「どうしてゼリーなの?ワインなのは分からなくもないけど」
「ゼリーならつるんと食べて頂けるかなと思いまして」



すると社さんは更に驚いたように今度は口を開けて一瞬フリーズした後、今までとは比較にならないくらいの笑みを浮かべた。
笑みというか、何か裏がありそう……って何失礼なこと考えてるのよ私は!



「もしかしてキョーコちゃん。蓮がバレンタインのチョコは一切食べないの知ってた?」
「いえ、存じてませんが」



やっぱり敦賀さんはチョコは食べないんだ。
何となくそうだろうとは思っていたけど、やっぱりそうだったんだ。



「でも、何となくそうかな、とは思ってましたけど、やっぱり食べないんですね」
「うん。まぁ、毎年山のように届くからね。蓮曰く、ひとつ食べたら頂いたチョコは全部食べなきゃ申し訳ないってっさ」
「何か……敦賀さんらしいです」



何となく想像がついて私は敦賀さんには申し訳ないけど、その姿を思い浮かべてつい苦笑してしまった。
誰にも分け隔てなく優しい人だからそうだとは思っていたけど……うん、やっぱりゼリーにして正解だったわ。



「敦賀さんって甘い物を好むイメージもなければ、食べる姿も全く浮かばなくて、だからどうしようって思ってたんです。でも、ワインゼリーにして正解だったみたいですね。……食べて頂けたし」



(ワインゼリーは作るのに本当に苦労したけれど、全部食べて頂けたし。美味しいとも言って貰えたし。本当にアレにして良かったわ)



ほんわりと感じる温かさに安堵して、ふと視線を持ち上げれば、そこにはそれはそれは嬉しそうに笑っている社さんがいた。
というか、今の話の何処がそんなに嬉しいのでしょうか?



「へぇ〜。ふぅ〜ん。そっか〜そういう事かぁ〜!ちなみにどうしてワインゼリーだったかって理由は蓮に言った?」
「え?一応、言いましたけど」
「そっかそっか〜うんうん、そういう事ね。そりゃ蓮の機嫌も良くなる訳だ」
「はぁ……ワインゼリーで機嫌が、ですか?」
「だって蓮だけなんだよね?他の人は皆チョコなんでしょ?」
「そうですけど」



う〜ん。やっぱり敦賀さんは謎の人だわ。
最も謎なのは、あの後の行動だけど……ってだから何でまた蒸し返すのよぉおお〜〜私ったら破廉恥よっ!!!
ほら、平常心!平常心!兎に角今は落ち着くことが優先よ、キョーコ!



「あ、あの。社さん?今いち良く分からないんですけど、私はただチョコじゃなければ食べて頂けるかなって思っただけですよ?」
「…………」



(あれ?またフリーズ?社さん何処か具合でも悪いのかしら?いつもならフリーズするのは周囲の人達……というか、敦賀さんに群がるファン達だけど……ご自分に特殊能力を使ってしまったのかしら?)



「……一応確認の為に聞くけど」
「はい?」
「キョーコちゃん。それが何を意味するのか分かってる?」
「何をって何がですか?」



意味が分からず首を傾げると社さんは一拍置いて大きく溜息を吐き、そして何かをぶつぶつと呟いた。



「うん。まぁ何となく期待しちゃいけないとは思っていたけど……いやいや待てよ。前の蓮のように無自覚なだけで結構これは脈が有るんじゃ……いやいや、相手は天然乙女。決定的打撃がない限りは期待をしては……しかし、でもこれは明らかに……」
「あの〜?どうかなさいましたか?」
「ん?あ、大丈夫大丈夫!それよりキョーコちゃんの出番みたいだよ!早く行かないと!」
「は、はい!」



半ば無理矢理背中を押され、私はセットに向かった。
何だか釈然としない気持ちはあったものの、私は未緒になるべく呼吸を整えようと息を大きく吸った。



(何はともあれ、今は撮影中なんだからしっかりしないと!)



頬を軽く叩いて気合を入れ、もう一度しっかりセットの方を見れば、うっかり見てしまった彼の姿。



(あわわ、ちょっとちょっと待って!何また見ちゃってるのよ!って、違う!平常心平常心平常……)



必死の深呼吸も虚しく、ばっちりと目が合ってしまい、更に酷くなる動悸。
身体中の血液が沸騰せんばかりに暑い私とは対照的に、どこまでも平常心で落ち着き払っている彼の御仁は、にっこりとそれはそれは優雅で優美な笑みをこちらに向けた。



(ひぃいいいい〜〜〜!神々スマイルってどういう事をぉおお〜〜〜!?干からびるわ〜〜〜滅びるわ〜〜〜!)



余りに神々しいその笑みから逃げたいが、逃げられない自分の役者魂は、私の足を舞台へと向かわせる。
そういえば次は嘉月とのシーンだったと思いながら、勝手に動く足に悲鳴をあげる。
今、この神々しい人に近付いたら今度は火傷では済まなそうな気がするけど、足は止まらない。
まるで吸い寄せられるようなオーラにふらふらと呑まれていく。



「顔真っ赤だけど、どうかした?」



(あ、貴方がそれを聞かないでくださいぃぃぃいいいい!!!)



「もしかして風邪かな?最近めっきり寒くなったしね。あと少しで撮影は終わりだし、帰りは下宿先まで送るよ」
「け、けけ、結構です!お、お疲れのとこ……」
「遠慮なんかしなくていいよ。本当に風邪でも引いたら大変だからね」



“本当に”って、やっぱり分かってて言ってるんだわ。
もう本当に意地悪大王!
って言えたらどんなに楽かしら……口が裂けても言えないけど。



「ああ。でも熱はなかったみたいだよね。おでこに触った限りではそこまで熱くなかったから」
「ん、なっ!!」



(なっ……なななな、何て事を〜〜〜っ!!これって絶対あの事を指しているのよね!?しかも触ったって何!?手で触った訳じゃないのに!って、だから余計な事は思い出さなくていいからっ!しっかりなさい!最上キョーコ!)



「んー。少しは意識してくれた、かな」
「はい?」



余りにも恥ずかしくて頭に血が上ったせいか聞き取れずに聞き返すが敦賀さんはにっこり笑うだけだった。
これはもう絶対にからかっているとしか思えない。



「そういえば、あのワインゼリーってアルコール含んでいるの?帰りは一応運転だしね」
「ちゃんと飛ばしてますけど……じゃないと未成年の私が味見なんて……っつ!!」



不覚にも思い出すさっきの目の前の人の所業。
顔がかっと熱くなる。



「ん?そんな涙目で見上げて……何か俺に言いたい事でもあるのかな?」
「……っ!!」



もう!本当にこの人は意地悪!意地悪似非紳士よ!
絶対、ぜーったいに分かってて言ってる!そうに決まってる!



「さぁ、撮影だ」
「うぅ……」



ああ!もう!これから毎年毎年思い出すのかしら!
何がバレンタインデーよ!とんだ悪夢フェスタだわ!



「ほら、監督が待ってるよ?」
「わ、分かってます!もう覚悟して下さいね!橘嘉月先生!」
「いつでもどうぞ。本郷未緒さん」



本当に覚悟して下さいね、敦賀さん。
いつかきっと……いいえ、絶っ対に!意地悪な貴方をぎゃふんと言わせて見せるんだからっ!

































Fin

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【あとがき】


〜 ACT.148 バレンタインXXXX 続き妄想 〜 【祈-PRAY-】 Side.K


どうでもいいけど、どうしていつもコメディちっくで終わるのだろう。
本誌推理考察祭りに参加したものの、何か色々脱線しているような…
う〜ん。希望は多々あるんです。
あるんですけど、実際書くとこんなもんに。


…はい。自分でも意味が分かりません。


本誌発売までまだあるなぁ……
もう少し違った見方とか、同じでも違う表現とかで書きたいけど
うちの息子殿が完全に昼夜逆転してて結構しんどい(汗)
…とか言って、夜中から朝方面倒見てるのは旦那(笑)


ちなみに昨日夜10時に覚醒し、寝たのが朝の11時。
もう一度言います。
24日PM10:00頃に覚醒し、次に寝たのが25日AM11:00です。


色々と常軌を逸している子です。
寝ない我が子を案じ、私は一ヶ月検診の時に病院で伺いました。


「すみません。うちの子本当に寝なくて…
半日とか平気で起きているんですが、大丈夫なんでしょうか?」

と。でも助産師さんは言いました。


「随分体力のある赤ちゃんですね。
大人のような睡眠サイクルでもミルクをしっかり飲んで体重が増えていれば
全く問題ないですよ。でもお母さんは大変ですよね〜」


えぇ、そらもう毎日が戦争ですって。
起きてても静かにしていれば良いのですが、「えへっえへっ」って
妙な声を発しながらガン泣き(※涙は出ない)ですから!
…何故ウチの子は「えへっえへっ」と泣くんだろう?
「え〜〜〜んっ、えへ、えへっ」を繰り返すんですよ。
しかも、男の子なのに女の子より女の子らしい声で!甘えボイスで!


…会う人会う人に爆笑されてるじゃないか!!





作成 2009/10/25(日) 22:29:18
更新 2009/10/20(火) 00:00:57
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