別に君を困らせたいわけでも、苛めたいわけでもないんだ












でも、あんまりにも無防備だから












それをどうにかして欲しい



















ただそれだけなんだ



















[教育指導シリーズ] - Side REN -
【無垢で無防備な君】




















「冗談ですよね?」









冗談で済ませてあげられるなら、俺は最初からこんなことはしないよ?









「さあ…どうかな?」









最上さんを部屋の隅に追い込んで、両手を壁に当てて逃げ道を防いだ俺は、わざと含みを持たせたような言い回しをする。









「つ、つ、敦賀さん。わ、わ、私っ、何かしましたかっ!?」
「したよ。」









ほら、やっぱり分かっていない。










君が純粋なのは好ましいけど、無知な上に無防備にされると俺の心臓が持たない。









いい加減自覚して欲しいと願うのは、俺の我侭なのだろうか?






























最上さんが俺の存在に気づく前に、俺が先に最上さんの姿に気がついたんだ。
それは、つい数分前のことだった。









ちょっとした用事があって事務所に立ち寄った俺は、用事があるという社さんを待っている時間潰しに、事務所内をフラフラと歩いていた。
特に宛てもなく、ただフラフラと。









白状すれば、少しは会えるかもしれないという淡い期待は持っていたんだけどね。
まさか実現するとも思わなかったのも事実で、本当に偶然聞こえてきた彼女の……最上さんの声に、俺はらしくもなく少しだけ動揺してしまった。









最上さんの声が聞こえた方向に足を伸ばしたのは、今更言うまでもないと思うけど、俺はそこで思わぬ光景に遭遇してしまった。









それは、年若い男二人と何やら会話している最上さんの姿。

とても楽しそう、とまではいかないが、明らかに楽しそうなのは最上さんの顔を見れば一目瞭然だった。










最上さんのそんな表情に、胸の奥で黒くてトグロを巻いた何かが生まれたんだけど、それも次の最上さんの顔を見た瞬間に引っ込んでくれた。

最上さんは、少し困惑しているような表情を浮かべた。









「ねぇ、京子ちゃん。君さえよかったらうちのリーダーと食事にでも行ってあげてもらえないかな?」
「リーダーって光さんのことですよね?」









光さん?
どこかで聞いたことがあるような、ないような……









それにしても“光さん”とは、随分親しげなようで……









苗字で「さん」付けされている自分とつい比較して、再び黒くてトグロを巻いた何かが生まれてきそうになったのだが、それを何とか呑みこむようにしてぐっと堪えた。
これではいつかの二の舞になってしまう、と。









「そうそう!その“光さん”と!」
「はぁ……」









俺は瞬時に、その“光さん”とやらが最上さんに好意があることは理解できた。
まぁ、それはそれでいい。
俺にとっては良くはないが、それをどうこう言う権利は俺にはないのだから、それはそれで仕方がないこと。









「ねぇ、どう?」
「はぁ……でも、食事と言われましても……」









至極曖昧な返事しかしない最上さんの顔は、明らかに困惑していた。
このままでは、成し崩し的に最上さんが折れるのは目に見えていた。
困惑はしていても、それをどうしたらよいか分からないという顔をしているのだから間違いない。









「もし、迷惑じゃなければ!どうかな?京子ちゃん!」
「えぇっと……迷惑ということはないのですけど、その……」









“迷惑ではない”という最上さんの言葉に、俺は“どこかで聞いたことがある”という思案は霧散してしまった。
それこそ綺麗さっぱり見る影もなく。









「とある方に、あまり親しくない異性と二人だけで出かけるのは好ましくない、という教えを頂いておりまして……」









最上さんが何かを言っていたようなのだが、もうその言葉も俺の頭には届いていなかった。
介入するつもりがなかったにも関わらず、俺の身体は既にそちらに向かって勝手に動き出していた。









「二人がダメなら俺たちも一緒に……」
「つーかお前らっ!!!一体何してんだよぉぉぉおおおお!!!!!!」









思わず立ち止まってしまう程の声量のある高めの男の叫びがこの廊下に轟いた。
ハッと自我を取り戻した俺は、自分がしようとしていたことに動揺しつつ、最上さんと相対している男二人に向かって駆け寄ってくる背の低めの男を遠目で見つめた。









「京子ちゃん!ごめん!こいつらが何かまた変なコト言ったんだろ!?」
「光さん!」
「り、リーダーっ!?」









なるほどアレが“光さん”か。
やっぱりどこかで見たことがある。









「ったくお前らは〜〜〜〜!!京子ちゃん困らせるようなこと言ったんだろっ!?いい加減にしろよっ!!!」
「だってリーダーがいつまでもグズグズしてるから」
「そうだよ、俺たちはただ……」









様子を見る限り、そんなに悪い男でもなさそうだ。
むしろ最上さんを気遣っている辺り、彼は良いヒトなのだろう。









「京子ちゃん、本当にごめんな!こいつらが迷惑かけて!」
「あ、いえ……私、別に迷惑だなんて思ってないですから。こちらこそ撮影ではいつもお世話になって……」









“迷惑だなんて思ってないですから”









この言葉に完全に頭が真っ白になった。

よく考えれば分かる台詞だったんだ。










最上さんは誘い自体には困っていた。それは、先程の態度を見れば明らかだった。

だが今、「撮影では」と言っていた。仕事で共演か何かをしているのだろう。










目上年上には本当に細部まで気配りをする最上さんが、その人間相手に「迷惑」などと間違っても口にはしない。

そんなことは考えるまでもなかったのに、俺はその思考に至れなかった。
至れなかった俺は、黒くてトグロを巻いた感情に再び囚われてしまった。









「ホント?京子ちゃん!?それじゃ、今度リーダー…だけじゃ心元ないから、俺たちと一緒に食事にでも行こうね〜〜〜!」
「お前らぁあああ!いい加減にしろ!!」
「え、ちょっと!?」









彼らにリーダーと呼ばれていた男は、顔を真っ青にしながら両脇に二人の男の頭を捕らえて、「いいから、もう行くぞ!」とずるずると引きずって歩き出し、顔だけを最上さんに向けた。









「京子ちゃん。本当にごめんな!でも、その………ホントに良かったら……今度………」
「いや、ですから……異性と二人きりもそうなんですが、異性の……」









真っ青だった顔を赤く染めながら何やら呟く“光さん”に最上さんは慌てたように言い募っていたのだが、それは全く届いていないようだった。
そう、今の俺と同じように。









「異性の中に一人で行くのもよろしくない、とも教えいただいて……って、聞いてないか」









そして最上さんは頭を数回掻きながら、くるりと振り向いてこちらに向かって歩き出した。










俺との距離まであと数十メートル。









最上さんが俺に気がつくまであと数秒だった。





























「あ!敦賀さん!こんにちは」









最上さんは、俺の姿を見るなり可愛い笑顔を浮かべながら、ペコリと頭を下げた。

ようやく俺の姿に気がついてくれたんだね、とその事実を嬉しく思いながらも、何とも言えない黒い気持ちに既に囚われていた俺は、溢れ出てくる感情をもう止められそうになかった。
なけなしの理性が「それはあまりに理不尽だ」と叫んでいたけれども、俺は“分かっていて”それを無視した。









「こんにちは、最上さん」









俺が沸き上がる黒いモノを隠すようににっこり微笑むと、途端に最上さんの顔が引き攣った。

本当にこのコは、俺の感情の変化に聡い。
特に肝心なことが絡まない感情には、腹立たしいほどに聡い。









最上さんは引き攣った顔そのままにくるりと踵を返すと、サカサカと聞こえるくらいの高速で手足を動かし出した。
つまりは、俺から逃げようということなんだろう。









何というか、無駄な努力なんだけどね。
逃がすつもりなんて、さらさらない。









最上さんが必死に逃げ込んだのはラブミー部の部室だった。
俺は寸でのところでそれを阻み、彼女と共に部屋に入り込み、丁寧に鍵まで掛けた。










そう、逃がすつもりなんてないのだから。









後ずさる最上さんを部屋の隅の壁まで追い込み、彼女の身体の両側に手をついて完全に逃げ場を塞いだ。
ますます青ざめる彼女を可哀想にも思ったが、それはそれ、これはこれである。









「最上さん。まだ逃げる気はあるかい?」
「逃げたくても逃げられないじゃないですかっ!?」

「それじゃ、観念すると受け取るけど…いいね?」
「よくはないですけど、どうせ聞いてくれないのでしょう?」

「よくお分かりで」









さて、どうしてくれようか?
この娘の無防備さは半端ではない。









先程の“光さん”とやらはまだ良い。少なくともその周りにいた二人の男よりは彼女を気遣っている節があったから。










だが、世の男が皆そうとは限らない。
今回は良かった………いや、助かったと言えるだろう。









だが、これが全く違う男だったなら話は全く違う方向に進んでいた。
今回は、たまたま運が良かったのだ。









そう言えば、少し前に似たようなことがあった。
アレはいつだったか………そう、最上さんが俺に意味不明の留守電を残した挙句、特に事後報告も何もなしに放置されたあの件だ。









俺は少し前に起きた“あの件”について思い出した。









“つ、敦賀さん!じ、実はご相談がありまして”









……からはじまった最上さんの残した留守電。









“モー子さんに相談しても「好きにすれば?」としか言ってくれなくて
 じ、実はとある番組関係の方……えっとブリッジロックという男性グループで、LMEのタレントさんなんですけど
 その方に誘いを持ち掛けれれまして、その、こういう時、後輩としてはどうしたら良いのか……
 私にはさっぱり分からなくて……そうでなくても相手は男性で、なので、その……”









そこで見事に途切れた留守電。
話がさっぱり分からなかったのだが、要は“とある男性に誘われてそれをどうしたら良いのか”ということなのだろう。









この留守電を残してくれた彼女に第一に告げたいのは、“良く俺に聞いてくれた”ということ。
未然に馬の骨候補を駆除できる……のは置いておくとして、大事な親友の次に俺に相談してくれたことが嬉しかった。

とにかく内容が内容だけに、さっさと彼女にこういう時の対処法を……と思い、すぐに電話をしたのだけど、タイミングが悪かったのか最上さんは出なかった。










そして何度か電話をかけてみたのだが、どうしてか繋がらない。
その上、彼女からも音沙汰なし。










単純に仕事なのだろうと思ってみたのだが、丸一日ともなると流石に焦ってきた。

最上さんだって俺に迷惑をかけまいと思っているのだろう。滅多に留守電など残さない。
その彼女が留守電を残したくらいだ。きっと緊急だったはず。
それにも関わらず、その留守電のみで全く連絡がない。










こちらからいくら掛けてみてもちっとも繋がらないので、こうなれば椹さん辺りにスケジュールを聞いて、本人を捕まえるしかないかと思っていた矢先だった。

事務所で彼女を見つけたのは。










彼女は俺を見るなり、今回のように逃走を図ったのだが、それをみすみす逃がす俺じゃない。
あっという間に捕獲して、ひとつ教育指導の名の下に罰を与えた。










その時の彼女の反応は、実に可愛らしかった………のだが、これも置いておくとして、その夜に再び捕まえた彼女を連れ出して留守電の中身を聞いた。

それは想像していた通りの内容だったので、俺は開口一番に伝えた。









『いくらお世話になっていても、あまり親しくない異性と二人だけで出かけるのは好ましくないな』









彼女は案の定、首を傾げたのだが、俺から漂う剣呑な雰囲気を察したのか「承知いたしました!敦賀先輩!」と何処ぞの兵隊のようにはっきりと返事をしてくれた。

この時、俺は良心の一端が微かに痛んだ。










……が、実際の話、最上さんのようにそういう方面に疎い場合、その誘いの裏にあるものなど恐らく全く考えていないだろう。
彼女に限って言うなら、絶対に考えていないと断言できる。









全員が全員、疚しいことを考えているワケではないだろうが、考えている可能性がないワケでもない。
それを判断し得るだけの勘なり経験なりがあって、その上で自分で対処することができるなら俺だって何も言わない。









……まぁ、たぶん









彼女の場合、それができないのは目に見えている。
彼女に………最上さんに何かあったら、なんて考えたくもない。










だったら、はじめからその危険を回避させれば良い。
俺が達した結論は、自分の都合の良い、勝手極まりないものだった。









……だからといって、今更撤回する気もないけど









そして、勝手ついでにもう一つ最上さんに伝授したのがコレ。









『異性しかいないところに、女性ひとりで行くのもよろしくないな』









コレにも彼女は良い返事を聞かせてくれたので、俺はほっと安心したのを今でもよく覚えている。
彼女を必要以上に縛り付けても良くないのは承知していたので、もうひとつ付け足した。









『まぁでも、君が絶対的信頼を置いている誰かがいるなら、話は別だけどね』









すると最上さんは一瞬だけ何か考える素振りを見せ、俺の顔を見上げた。









『なら、モー子さんが一緒なら良いってことですか?』
『そうだね。彼女が一緒なら異性の中で一人ってことにはならないしね』









前提条件は、“異性の中で彼女が一人になる”なので、それについては全く問題ない。
むしろ琴南さんがついていれば、百人力とも言える。









『えっと、それじゃあ……敦賀さんが一緒の場合なら良いんでしょうか?』
『ん?』









流石の俺もこの彼女の発言は予想外だったので、つい聞き返すような返事をしてしまった。









『ですから、その……絶対の信頼を置ける誰かとのことでしたので、
 敦賀さんが一緒なら良いのかな、と思いまして……』
『あ……うん、そうだね』









最上さんのこの言葉に嬉しさを感じつつも、俺は必要以上に期待しないことも己に銘じた。
絶対の信頼の中にはきっと社さんや椹さん、社長なども含まれているだろうから。
自分のそんな思考に呆れつつも、それでも彼女に信頼されていることが嬉しいのは変わらない。









俺は少し前に起きた“留守電事件”をそこまで思い出し、その時に抱えた複雑な気持ちに苦笑を漏らした。
もちろん、心の中で。

そして、再度彼女の茶がかった大きな瞳を覗きこんだ。









「この間…俺は言ったよね?」
「な、な、なんの事ですかっ!?」









何のことかは分かっているがあえてシラを切っています、という表情をしている最上さん。










嘘をつくならもう少し上手くつけば良いものを……









「知らないフリをするのは関心しないな。もう一度、教育が必要なのかな?」









そう、俺はあの時言ったのだ。









“次はこれじゃ済まないよ”…と。









すると最上さんは、かなり困惑したのか顔を真っ青に染め、あれやこれやと凄まじい動揺を見せた。
そして、ほんのり色づいた桜色の唇を噛み締め、ぐっと力を込め、俗にいう腹を括ったという表情を見せた。









「す、すみませんっ!!!心当たりがありません!!!ごめんなさい!!許してください!!!」









あまりに予想外すぎる最上さんの懺悔に一瞬呆気に取られたが、明らかに原因が分かっていない平謝り。









「いいよ。許してあげる。」









口からほろりと零れた彼女を許すという言葉に、俺はたっぷり意味を含ませた。









「謝ってくれたんだから許すよ。」









俺のこの言葉に、最上さんが心底ホッとしたような表情を浮かべた。
だから、俺は言葉に含ませた毒を少しだけ覗かせる。









「君が何をしたのか全くわかってなかったとしてもね?」
「!?」
「だから、これで許してあげるよ。」









自分の中でトグロを巻いていた黒い感情が何なのかはもう分かっていた。
そしてそれに触発されて覗かせたのは、奥底に封印していた昔の……いや、本当の“俺”
それが“敦賀蓮”の皮を破って現れるのを感じたが、俺はそれに抗うことはしない。









「前に言ったよね?覚悟できてるかな?」
「か、か、か、覚悟なんて…っ!」









俺の変化を敏感に感じ取って動揺を見せる彼女の白い頬に、ゆるりと手を伸ばし、そっと触れる。
撫でるように頬に触れながら、どこにも逃がさないという意思を篭めた瞳で彼女を絡め取る。









「逃げないの?」









相対している俺を真っ直ぐに見つめたまま、抗うことも逃げることもしない彼女。









「…分からない…です」
「………」









分からない、と漏らす彼女の顔は俺を誘うには十分すぎるほどの艶を宿していた。










まだまだ青い果実。
花が咲く前の膨らみはじめた蕾。
それが、今の彼女。









桜色の唇に指を滑らせてみせても、彼女は否を唱えない。逃げようともしない。
だから、少しその距離を縮めてみた。

どこまで許されるのか、知りたかったから。









限界まで迫ってみせても逃げない彼女。
それどころか瞳さえ逸らさないで、真っ直ぐに俺を見つめる。









このまま、俺を……受け入れるのか?









最後の距離を詰めようとした時、彼女はくっとその大きな瞳を瞼の奥に隠した。
その様子がひどく可愛くて、俺は最後の一線を何とか回避した。









本当に危なかったけど………ね









彼女の唇から少しだけズレたすぐ横に口付けた。









その瞬間、彼女は隠していた瞳を大きく見開いて、その黒目に俺の顔を映し出した。
そこには自分でも驚くくらいに微笑んでいる男の顔が映っていた。
それを確認しながら、俺は一歩だけ彼女から離れた。









「……あ…………」









彼女から漏れた吐息と声の意味は分からなかったけど、それでも俺は大事な彼女を壊さないようにと微笑ってみせた。









「……………驚いた?」
「……え…?」









何が何だか分からないという顔を浮かべている彼女を見つめながら、俺は胸で渦巻いていた黒い感情がすっと消えたのを感じた。それと同時に俺の本来の姿も影を潜めた。









「今回はこれで十分……。」
「十分って……?」









そう、これで十分。









「あ……」









最上さんが漏らした言葉を合図に、彼女の顔が途端に真っ赤に染まった。









「最上さん」
「ふえ?」









動揺したのだろう。最上さんはかなり変な声をあげて俺を見つめた。
そんな様子に苦笑しながら、俺は一歩近寄ると少し腰を折って、彼女の目線に合わせた。









その反応があまりに可愛いから、もう一度だけ、ね?









今度は先程とは反対の位置に。









「へ?…え……………え?……………えぇぇえええっ!?」









更に頬を紅潮させる彼女は、真っ赤になった顔をその細い両の手で押えて慌てふためいた。









「可愛い顔。」









予想以上の可愛い反応に、俺も思わず言葉が零れた。
本当に、最上さんは可愛い。









「な、な、な、何言ってるんですかぁああ!?貴方ってヒトはっぁぁあ!?」
「ほんとのことだよ?」









俺が“可愛い”と言えば、いつもそれを全力で否定するのが彼女のスタンスであり、今回もその期待を裏切るようなことはなく、俺はそんな彼女の反応に満足すると、更に一歩離れた。









「それじゃ、俺はこれから仕事だから先に行くね?」
「つ、敦賀さんっ!!」









正直に言えば、顔を真っ赤にしている最上さんをもう少し見ていたいと思ったが、生憎この後は仕事。
仕方がないと思いつつ、俺は部屋のドアの鍵を解除し、ドアノブに手をかけた。









「また明日ね、最上さん。」
「え、ちょっとっ!!」









背後で最上さんを呼び止める声が聞こえたけど、あえて聞こえなかったフリをした。
そして俺を探しているだろう社さんの携帯に連絡をしつつ、先程までの最上さんとのひと悶着に心を飛ばした。









黒くてトグロを巻いた感情は、ただの“嫉妬心”
それが彼女にほんの少し触れただけで、見る影もなく霧散してしまった。










俺自身、現金な男だと思うよ、ホントにね。

ようやく心に訪れた静寂によって、俺は見て見ぬフリをしていた彼女のあの言葉を思い出した。



















“あまり親しくない異性と二人だけで出かけるのは好ましくない、という教えを頂いておりまして……”



















“異性の中に一人で行くのもよろしくない、とも教えいただいて……”



















俺が彼女に教えたことを、彼女は忠実に守っているらしい。










今は何が起こるか分からないからという気持ちはもちろんあるのだが、“俺の身勝手な牽制”であるのは、誰の目から見ても明らかなはず。
社さんや、最上さんの親友である琴南さんが聞けば、俺の真意なんてあっという間に暴いてしまうだろう。

それが分かっていても、どうしても“そういう状況”にしたくないから、俺は自覚しつつもあえてその暴挙に出た。




















黙っていられなかったんだ。



















そんな俺の黒い心など知らない、まっさらな彼女









人を疑うことを知らない、無垢な彼女









先輩の言うコトを忠実に守る、純粋な彼女









俺の言動に面白いように反応してくれる、可愛い彼女



















「やっぱり、もう……手遅れ………かな?」



















この病はもう治らない。










どんな名医でもきっと匙を投げてしまうだろう。









俺のこの病に効く薬があるとするなら









それはきっと、この病の元凶である彼女自身









純粋無垢で無防備で、存在そのものが可愛い彼女



















彼女だけが俺の特効薬






































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【あとがき】




【教育指導シリーズ】


蓮さん視点のお話です。
いつもよりもちょっと長いですね。
ここまで読んで下さってありがとうございます!
そして、お疲れさまです!!!


シリーズ化してまとめてみました!
私自身分かりにくかったので……
ちなみに、最初の【教育指導】のタイトルを変更しました!


蓮さん側からも見てみたいとのリクエストをもらいましたので、
早速書いてみました!!
こんな感じでいかがでしょうか??


次の回で【教育指導シリーズ】は終わる予定です。
予定はあくまで予定ですが(笑)







作成 2008/02/16
更新 2008/02/16 22:12



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