またしても無理矢理泊まらされた少女・キョーコの翌日のお話。
どうやら今回も懲りることなく、二人のお世辞にも建設的とは言えない遣り取りが行われるらしい。






たぶん…………なのだが。



















〜似非紳士と天然少女シリーズ〜

【寝起きの攻防】



















超高級マンションの広すぎる一室にあるのが、現在ゲストルームと呼ばれているこの部屋。
ゲストルームには間違いはないのだが、今は特定の人物のみが使用しているという噂もある。
噂と言っても、誰が言ったワケではなく、まぁ設定の説明上に必要になったというか、何というか。
その辺りについては割愛したいと思う。






さて、そのゲストルームのベッドは現在空である。
時刻は午前七時。この部屋を使用していた人物は、もうここにはいなかった。






ゲストルームにはこの部屋を使用している人物の私物がいくつかある。
普通、ゲストルームというものは不特定多数の人間が使用するので、特定個人の私物を置くことはまずない。
ないにも関わらずに、この部屋には私物があった。
私物と言っても、本当に簡単な着替え程度だったが。
ちなみにその着替えは元々、ここの持ち主のものであった。
それを泊まることになった………正確には、「泊まらせた」ないし「仕事上で泊り込んだ」“彼女”に貸し与えたものをそのまま“彼”があげただけなのだが。






そんなゲストルームを出て広いリビングを徘徊してみる。
ここにも“彼女”はいない…………というか、誰もいない。
しかしながら、何やら良い匂いがする。多分これは朝食なのだろう。
よくよく見てみると、リビングのテーブルにはスクランブルエッグとウィンナー、傍らにはレタスを中心としたサラダが綺麗に盛り付けられていた。
コーヒーカップも用意されているようだが、これには中身が入っていない。
銀製のスプーンとフォークが綺麗に並べられており、後はこれらを食す人間を待っているといったところだろう。






だが、それにも関わらずこのリビングに人の気配はない。
人の気配を感じたのは、この広すぎるリビングやゲストルームの所有者である人物が使用している寝室からだった。






「敦賀さーん!朝ですよ〜〜〜!起きて下さ〜〜〜い!」






例のゲストルームの使用者である“彼女”が爽やかな朝に相応しい明るい声で、キングサイズのベッドで安眠している“彼”に手を掛け揺り起こそうと試みているようだ。
何度かの呼びかけの後、“彼”は僅かに身じろぎ瞼が震えた。
女性が羨むであろう長い睫がゆっくりと開けられ、黒茶色の透明感のある瞳が露になるのを確認した“彼女”は揺り起こす為に添えていた手を静かに離した。






「………ん………おはよう、最上さん」






寝起きの為か幾分掠れた声が、朝日に照らされたこの部屋に響き、“彼”……いや、蓮はその双眸にキョーコを映した。
キョーコは自分の顔が蓮の瞳に映っていることを確認すると、にっこりと明るい笑顔を浮かべた。






「おはようございます。敦賀さん。朝食の準備は出来てますから早くリビングに来てくださ………って、きゃあ!!?」






突然蓮の腕が伸びてきてキョーコの腕を見事に捕らえ、そのままぐいっと引っ張られ、キョーコはバランスを崩しそのまま倒れ込んだ。






どこに…………って?
それは改めて言うまでもないでしょう。






「ちょっ!!何すんですか〜〜〜〜〜!!!」
「………おはよ」
「それはさっき聞きましたっ!それよりもこの手を何とかして下さいぃぃいいい!!」
「うん………」






と頷きながらも、蓮はその手を何とかするつもりなど毛頭なさそうな返事をする。
キョーコはなおもジタバタともがくのだが、だからといってこの状況が何とかできるわけもなく、むしろ悪化した。






「寝呆けているんですか!?早くは〜な〜し〜てぇ〜〜〜〜!!」
「うん、寝呆けてる」
「絶っ対嘘ですっつ!寝呆けてなんかいないくせにぃ〜〜〜〜〜っ!!!!!」
「寝呆けてるよ」
「何で離してくれないんですかっ!?どうして毎回毎回〜〜〜っ、イジメにしても程がありますよぉおおお!!!」
「だって君、抱き心地がいいから」






普段からは考えられないほど無邪気な笑顔を浮かべる蓮は、本当に気持ち良さそうにキョーコを抱えていた。
あながち抱き心地が良いという取ってつけたような理由も嘘ではないのだろう。
見方によっては微笑ましく見えないこともない光景なのだが、蓮は兎も角として、キョーコの焦りでいっぱいいっぱいな表情を見ていると何ともいたたまれない。






この状況を説明しよう。
察しはついているかと思うが、キョーコは現在蓮の腕の中である。
先程、腕を引っ張られた勢いそのままに、キョーコはベッドに引きずり込まれた。
ベッドに引きずり込まれた、とだけ聞くと、何とも如何わしいのだが、目の前にあるのは単純に蓮に後ろから抱きつかれているキョーコ、の図である。
そして、キョーコの腰周りに腕を絡め、その栗色の髪に顔を埋めたまま繰り広げられる攻防は、依然として続いていた。






「私を抱き枕扱いしないでくださいぃいい!!!」
「抱き枕ってのもいいね。これから寝る時は君を抱っこして寝ようか」
「それ、セクハラですから〜〜〜!いくら大先輩でもやっていいことと悪いことがありますよぉおお!!!」
「冗談だよ、冗談」






声のトーンも常と変わらないものに直ったらしい蓮は、事もあっさりとキョーコを開放した。
キョーコは蓮の呪縛が解かれると同時に弾かれたように身を翻し、ささっとベッドから距離を取る。
ふーふーと唸りながら、目を吊り上げる様は警戒心剥き出しの猫のようだ。






「とにかくっ!朝御飯の準備は出来てますから、さっさと顔を洗ってリビングまで来てください!!!」






声に力を篭めて、かなり強い目線を送りながらそこまで言い切ると、キョーコはドタドタと怪獣が闊歩するような足音を立てながら寝室を去っていった。






「そろそろいい加減にしないと嫌われるかな?」






そんな言葉を呟きながらも、蓮の顔は驚くほど緩んでいた。
彼のマネージャーが見たら「蓮!顔戻せ!顔!」と“敦賀蓮”のイメージ保持の為に必死に窘めるに違いない。






「嫌われるのは御免だけど……ね」






だからと言って、改めることはもう無理だとばかりに苦笑し、蓮はすっと立ち上がると、キョーコが待っているだろうリビングへと向かうのだった。



















To Be Contined...?



















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【あとがき】


【似非紳士と天然少女】シリーズ


久しぶりの更新ですv
たまには長編以外も更新しないとなぁ、と思いとりあえずコレにしました!


しかし、これは誰? って感じがします。。。書いたのは私だけど(汗)
しかも書いたのは一年前だし。。。文章が今と違う(笑)






作成 2008/04/18 10:23
更新 2009/03/31(火) 19:58:10



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