誓い





こんな感覚は初めてだった。









これまでの経験では感じたことがない感覚。









腕の中にあのコがいた時の感覚は、これまでに経験した、彼女達に対してのそれとは全くの別物。









狂おしいほど切なく









胸を締め付ける想い









感じる温もりが何よりも愛しくて









自分でもどうしようもなかった










以前、社長が俺に言った言葉を思い出す。









俺自身は、彼女達をそれなりに好きだった。










でも、あのコに触れたときに俺は思い知った。









俺が“恋”だと思っていた、かつての彼女達への“好き”という気持ちは“恋”とは違うものだったのだと。









あえて言葉にするなら、









『人間として好き』









そう、彼女達を人として好きだったんだ。









だから、彼女達から“別れ”を告げられても、俺は何も思わなかった。彼女の意思を尊重した。









“他に好きな人ができた”









例えそう言われても、それが彼女の幸せになるなら身を引こうと。









社長の言う通り









“その程度”だったんだと思う。









もちろん、いい加減な意味じゃない。










俺は俺なりに彼女達を大事にしてきたつもりだ。









ただ、彼女達が俺に向けた感情と










俺が彼女達に向けた感情が全く別物だっただけ。









「この年で初恋っていうのも…アレだな…」









順番がまるで無茶苦茶な俺。










一体、何年生きてきたんだ…と思ってしまう。









「社長には知られるし…社さんには、俺も分かっていない時から、気がついていたみたいだし…」









もしかして顔に出やすいのか?









そんな疑問を二人に投げつけたところで、鋭い刃が返ってくるのは必至。










だから、あえて誰にも聞かない。









最も…肝心のあのコが何も気がついていない。









気づかれても困るけど…









俺は、ここでは“大切な人”を作れない。










ここじゃなくても、どこでも作れない。









それは分かっているのに…









なのに俺は、あのコが誰かにところへ行ってしまうと考えると、









居ても立ってもいられなくなる。









誰にも渡したくないと…









そう思う自分がいる。









頭で決めているのに、心が言う事を聞かない。









矛盾している。










「ホントに怖い病気だよ。どうしようもないじゃないか、これじゃ。」









特効薬はあるのだろうか?
こんなどうしようもない病に効くような特効薬は。









あのコは、今。










俺をどう思っているんだろう?









嫌われていないとは思う。

嫌われているなら、それはすぐ分かる。










あのコはそういうコなのだから。









ただの先輩以上に思ってくれているのだろうか?









少しずつだけど、“ただの先輩”以上になっている気がしないでもない。









分からないけど。









“ただの先輩”以上になられても、困ると思っていたくせに

結局、余計な欲が出てしまったじゃないか。









自分のものにしたいという気持ちがないわけじゃない。









今のあのコなら、誰の手にも落ちることはないと思っている。









でも、一番厄介な男があのコの前に現れた。









名前ひとつであのコを揺さぶれる、ただ一人の男。









あのコを傷つけた男。









冗談じゃない。









今更。









今更…どうしようって言うんだ?









あれだけ傷つけて…









でも、逆に…









傷つくほどに、あのコはアイツを…










「出口のない迷路だな。これじゃ…」










自嘲的に笑って見せても、胸の奥に燻るものが消えない。










あのコの特別なんて、とうの昔から知っていたのに…









あのコの中の俺は、今どんな存在?









アイツよりあのコの心を占めることは、できないのだろうか?









矛盾している自分の心には、本当に溜め息しか出ない。









こんな俺でも、あのコの心に残っている思い出がある。









幼い頃に出会ったこと。









あのコは、今でも“コーン”を大事に思ってくれている。









俺があげた石を大事にしてくれている。









今でも心配してくれる。









俺とあのコだけが持っているものは、この遠い記憶。









今の俺が、“コーン”を名乗ることはできないけれど…









あのコの心に残っているなら…









それだけでも嬉しい。









“コーン”を想って泣くあのコを抱きしめた。









涙を流させてしまった不甲斐ない自分と









その姿を愛おしく想った自分と









あれほど、気をつけていたのに…









全霊をかけてロックしていたのに…









気がついた時には、この腕の中におさめていた。









「あの時、ホントによく我慢したもんだ。」









理性を失うその直前まで、必至に自分を保った。










そろそろ、いい加減危ないような気がするけど…









でも、それをしたら、きっと終わってしまう。









だから、必至に抑える。









今のあのコとの関係を失いたくない。









絶対に。









愛しい気持ちが溢れて、どうしようもなくなる。

だからこそ、大事にしたいと思う。










抱きしめただけで溢れる感情









それはとても恐ろしくて









でも愛しくて









あのコを失わないためなら









きっと俺は









何でもする




















あのコの中の









俺が









消えてしまわないようにする









そのためなら













******************************************************

【あとがき】


蓮視点です。


男性視点って難しいデス。
もっと修行しなくてはならないですね。
でも、キョーコ視点よりは書きやすかった。
私は一応女性なのに・・・なぜだろう??



尚視点も書いたのですが…。
尚の方が書きやすかったのはなんでだろう(笑)



作成 2007/11/05
更新 2007/11/17

******************************************************

戻る Galleryに戻る Homeに戻る
ページTOP