挑戦状





ロケ現場で見たアイツの姿は、今でも脳裏に焼きついて離れない。






纏う空気は刺々しくて、冷たい。







なのに、漂うのは気高さと研ぎ澄まされた風格。






『威風堂々』






その言葉がぴったりの姿だった。






アイツはあの時言った。






『私は未緒を何者も寄せ付けない、気高くて誇り高いイメージを第一に』






『生まれながらの王女のような威厳と品格を持って演ってきたのよ!』








ついこの間までの、おっとりしていたアイツの姿なんて何処にもなかった。






『尚ちゃん!尚ちゃん!』






満面の笑みを浮かべながら、明るく俺を呼ぶアイツはもう何処にもいない。






それは、俺が一番よく分かっている。







アイツをああしてしまったのは、俺。







昔の面影が見るも無残に消え去った。






いや、でも…






俺がVIE・GHOUL(ビー・グール)の奴らに打ちのめされた時に、俺自身を叩き起こしてくれたのはアイツだった。







あの頃とは、目つきも言葉も違う。






でも、






『飾らずに真っ直ぐに言えるところ』






それは、今も変わっていなかった。






一番の底の部分が変わっていなかった。







俺の知らないアイツではなかった。






それに酷く安心した自分がいた。






あのPV撮影の時だってそうだ。







俺は、復讐にきただろうアイツを叩きのめすことばかり考えていた。







なのに、アイツの変貌と姿勢、何もかもに圧倒された。






あの涙のシーンも。






悔しくて悔しくて、とても悲しい時のアイツの泣き顔。






俺が一番…苦手な顔。






ガキの頃から、ずっと一緒でも、あの顔だけは慣れなくて、何も言ってやれなかった。

だから、また母親の事を思い出したのかと思ったんだ。






でも、違った。そうじゃなかった。







それが、本当にほっとしたんだ。






いつからだったか、アイツは俺の前で泣かなくなった。







どんなに酷いことがあっても、涙を見せることはなかった。






アイツは言った。






『だから、私はアンタの前では泣くことを辞めたのよ。アンタを困らせたくなかったから。』






どうすることもできなかった、まだガキのころの自分。






でも、それはきっと今も同じ。






俺は、今アイツが泣いてもどうしてもやれないだろう。






アイツが泣きたい時、どうしていたのかは知らない。







どこかで隠れて、一人で泣いていたのだろうか?






それとも、どこか泣く場所があったんだろうか?






何度か見てしまった、アイツが大事そうに持っている『青い石』






アレは一体何なんだろうか?






“コーン”とは何だ?誰かの名前なのか?






分からない。







そして…







目の前に映る姿。







元々いけ好かない奴だった。






芸能界ナンバーワン






こいつの名前は『敦賀蓮』






俺が芸能界に入った頃から、いけ好かない男だった。







ナンバーワンを目指す俺にとって、こいつは敵。邪魔な壁だった。






最初に絡んだ時、こいつは気にも留めない素振りを見せた。
実際、俺の事なんか気にもしていなかったに違いない。







嫌味たらしく、スカした態度で俺の攻撃を受け流した。






なのに、次に対峙した時は全く別の反応だった。






嘘くせえ笑顔だった奴が、急に真剣な顔になった。







完全にキレてる表情だった。






『なんだ!?あの反応は?
 あれが、たかが後輩に裏切られた時にする顔かよ!?』






俺は悟った。







アノ野郎は、アイツを“ただの後輩”として見ていない。






おかしいと思ったんだ。







芸能界一イイ男とか言われてる奴が。







事務所が同じって言うだけで、まだ新人も新人のアイツをあんなに構うもんなのか?って。






何度か見かけた。アノ野郎と一緒にいるアイツの姿。







そりゃ、二人きりでいたところを見たわけじゃねえ。







それでも、アノ野郎のアイツを見る目が気に入らない。






あんな目で見られているのに、全く何にも気づかないアイツ。







アノ野郎が、アイツにとっては眼中外だっていう証拠だと俺は思った。






だけど…






心にひっかかるものがある。






アイツの中の存在がアノ野郎よりも、例えどんな形であれ、俺の方がでかいと思う。







だけど、それさえ超えるような何かをアノ野郎は持っている気がする。






ただの気のせいだとは思う。






だけど…漠然とした不安があるんだ。







目の前で映るアノ野郎とアイツ。






アイツはとうとうここまでやってきた。






本当にこの世界にやってきた。






目の前に映るのは「橘嘉月」と「本郷未緒」






俺が全く知らない二人がいる。







その二人が同じ舞台で対峙している。







いつも遠くから見えていた二人とは違う姿。違う空気。






俺が知っている「敦賀蓮」と「最上キョーコ」






いけ好かない男は、本当の意味でいけ好かない男になった。







ただの幼馴染だった女は、ただの幼馴染ではなくなった。







目の前で流れる DARK MOON の世界にいる二人に叩きつける。













…キョーコ。






俺は、お前の復讐が終わった時、お前に告げたい事がある。






お前は烈火の如く怒るだろうな。






また、得体のしれない金縛りに遭うかもしれねえな。






それでも、告げたい言葉があるんだ。













そして敦賀蓮。






俺はお前だけには絶対に負けねえ。






芸能界でも、こっちでもな。






涼しげな裏に隠された、その裏のツラ、また暴いてやる。













そして、二人に告ぐ。














「俺は不破尚。“敦賀蓮”お前にも、“京子”お前にも、俺は負けねえ!」













「覚悟しておけ!」













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【あとがき】


尚視点です。


蓮ともども男性視点って、やっぱり難しいデス。
でも、蓮よりは書きやすかった。
すごく不思議なんですが・・・
尚ちゃんも嫌いじゃないです。
少年っぽさがあって、蓮とは違う感じが◎



尚がらみの話も書きたいですが・・・
やっぱり蓮キョが先ですね!!



作成 2007/10/30
更新 2007/11/17

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