【ひらり、ひらりと】










〜 Scene.6 その言葉の意味 〜



























舞台は戻ってラブミー部の二人。










キョーコと奏江は揃って、変わらずに雑用に従事していた。
時刻はもうすぐ午後十時を指すところだった。










「さっきアンタが“気をつけてね”って言ってたのは、こういう意味だったのね……」










どこか疲れきったように溜息を吐きつつ、先程の腹立たしい出来事を思い出したのか、眉間に深い皺を寄せる奏江。
一方のキョーコは“慣れているため”気にしている様子はなかったが、慣れていないのだろう奏江を心配そうに覗き込んでいた。










「モー子さん、大丈夫?」
「えぇ、まぁ一応はね。それにしてもアンタすごいわね」
「……慣れているから」










苦く笑うキョーコの顔をちらりと見ながら、奏江は“ソレ”に慣れているのもどうなのかと思っているようだったのだが、あえてそれは口にしなかった。










「酔っ払いの相手って大変なのね。私は子供の厄介さなら嫌というくらい知ってるけど……
 ほら、子供は節度も何もない剥き出しの欲望をぶつけてくるから。
 でも、酔って欲望を丸出しにしている大人はもっと性質が悪いわ!」
「酔っ払いをまともに相手にすると大変だから……」










そう、キョーコと奏江の二人は、先程まで“酔っ払い”に絡まれまくったのである。
キョーコが“気をつけて”と言った直後から、尋ねる先々ですっかり酔いの回った人間(主に中高年)に無理矢理飲まされそうになったり、セクハラ紛いな発言や行動をされたりと、とにかく大変だったのだ。










「あんの親父ども〜〜〜〜〜!この私にセクハラかますなんて許せないわ!」










酔っ払いに慣れていなかった奏江は、それこそ餌食に近い状況だったのだが、生来からのしっかり者だったので、初めての体験でもすぐに学習をして、最善最良の方法で回避することに成功した。
その裏には、親友であるキョーコの手馴れた鮮やかとしか言いようがない機転もあったが。










「アンタは!?大丈夫だったでしょうね?どっか触られたりしてない!?」
「え?私はとりあえず大丈夫。せいぜい手を握られた程度よ。あのくらいならどうってこともないから」










だるま屋のお客は質がそれなりに良いので、不届きをするような客は滅多に来ないのだが、それでも偶に“そういう客”もいた。
更に言うならば、京都でショータローの家の旅館の手伝いをしていた時など、団体の宴会客を相手にしていた時は、だるま屋とは比べようもなくらいに、そういう被害に見舞われてきたのだ。
いつも女将さんがさり気なく助けてくれていたとはいえ、自分でも身を守る努力をしなければ、全く仕事にならなかったので、キョーコは時間はそれなりに掛かったが、今ではすっかり“酔っ払いのあしらい方”を身についていた。










奏江はキョーコの“酔っ払いのあしらい方”を思い出していた。











最初被害を受けた自分は、パニックのあまり感情的になってしまったのだが、対するキョーコは感情的とは程遠い対応だった。

中年親父に手を握られて誘いをかけられたにも関わらず、キョーコはその手を振り払うことなく、ただにっこりと微笑みながら対応していた。











声を荒げることも拒否もせず、ただにっこりと。











そして、自然に手を相手の手から抜き取り、流れるような動きで距離を取って、更に笑顔で対応を続けると、酔っ払いの中年親父もそれ以上は何もしないのだ。










“酔っ払い”とは常に感情的だ。
それはアルコールによって開放された本能に近い感情が垂れ流しになり、理性がどうしても希薄になってしまうからである。











そんな感情的な“酔っ払い”相手に感情的に対応しても「火に油を注ぐだけ」
“酔っ払い”を上手くあしらうには感情的になってはダメなのだ。











だからといって無関心でいても相手を刺激する。その匙加減が大変難しい。
これは経験で養われるものであって、今すぐどうこうで身に付けられるものではない。
経験が同世代と比べて、かなり豊富にあるキョーコだから成せる技と言えるだろう。










さて、そんな“酔っ払い”に免疫があるキョーコでも、この後に起こる出来事はうまく対応できなかったようだ。











これも俗に言う“トラウマ”ゆえ。











そう、仕方がないことだった。












































NEXT→Scene.7 ○○○はお断り



















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【あとがき】




キョーコちゃんが本当に“あしらい方”をご存知かどうかは不明なので
思いっきり捏造設定ということになりますvお許しをvv


さて次は、とんでもないバカ共(後に余りにも哀れな)を……


どうぞお楽しみにw






作成 2008/03/29
更新 2008/04/05



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