【ひらり、ひらりと】










〜 Scene.8 魔界人 〜



























「え……?」









得も言わぬ悪寒めいた気配を背に感じたキョーコは、あまりの衝撃に身を震わせながらも、バッと音がしそうな程勢いよく振り返った。
自分よりも頭一つ分は大きい影を見上げたキョーコは、口に拳がいくつも入りそうなくらい大きく開き、あまつさえソレに向かって指差しをした。









「んな、ななな、なんでアンタがココにいるのよっ!?この魔界人っ!!魔界へ帰ったんじゃなかったの!?」
「よぉ、久しぶりだなキョーコ。というか俺は魔界人じゃない。魔界に帰るも何もあるか」









夜の闇と同等の黒い上下に、肩までかかる綺麗に染められた銀髪。瞳はカラーコンタクトの薄い青で彩られていた。
相も変わらずどこか人智を超えている雰囲気を纏うレイノだった。
もちろんレイノのすぐ隣には長髪の人のミロクとその後方には、他のメンバー三人が控えていた。









「詐欺天使!?お前またレイノ君にちょっかい出す気か!」
「不破の女如きが、レイノ君に手を出すなっ!!」
「詐欺天使、詐欺天使ってうるさいわよ!
 大体、誰が誰の女よっ!ふざけた事言わないでっつ!相変わらず腹立たしい奴らねっ!!」









後方でぎゃあぎゃあ喚き散らしているメンバーに向かって、くわっと食ってかかるキョーコの形相は見れたものじゃないくらいに歪んでいた。









「赤頭巾ちゃんにこんなところで遭遇するとはね。レイノ、お前どうするの?」
「そうだな……」









喚き合っているキョーコを見つめながらレイノは辺りを見回した。
そして何もないことを確認したのか、レイノはもう一度キョーコに向き直る。









「キョーコ」
「な、何よ!魔界人!?私に何の用!?今度こそ私を魔界に連れて行く気なら相手になるわよっ!!」









スチャッと不思議なポーズで構えるキョーコに、一瞬瞳を丸くしたレイノはふぅっと息をあからさまに大きく吐いた。









「相変わらずミステリーな女だな。……まぁいい。それよりも、今日はあの凶暴なライオンは一緒じゃないのか?」
「は?凶暴なライオン?何ソレ?」









誰を指しているのか皆目検討がつかないキョーコは、「私はライオンなんて飼ってないわよ」と凄んだ。
それを意にも介さないレイノは、キョーコのその発言も完全に無視する。









「また噛み付かれたくはないだけだ」
「そういえばレイノ、ライオンって誰のことなんだ?」









ミロクはレイノを不思議そうに見つめながら、以前から抱えていた疑問を口にした。









「この赤頭巾ちゃんのナイトなの?不破じゃないみたいだけど……」
「ナイトなんて生易しいものじゃない。あれは凶暴凶悪なライオンだ。一生檻に閉じ込めておいて欲しいくらいだ」
「お前にそこまで言わせるヤツ……ね。興味あるな、ソイツ」
「ふん」









レイノが至極面白くなさそうにしている一方で、ミロクはレイノにそこまで言わせる“ライオン”に興味を持ったようだった。
そして完全にその存在を無視されているキョーコは、目の前の二人が何を言っているのか分からずに首を傾げていた。

そんなキョーコとレイノ、ミロクの前に割って入ったのは尚だった。









「おぃ、てめえら。どうでもいいが、さっさとどこかへ行け!」
「不破……か」









レイノは尚の睨みを受け流すように涼しげな瞳で見据え、かつて目の前の男に散々な目に遭わされたとは思えない不遜な態度を取った。
そのレイノの態度に頭にきたのは当然尚の方で、尚はふざけているのかと思えるレイノに向かって更に低く凄んだ。









「さっさと消えろ」
「お前に指図される謂われはない。俺たちも招待客なんだからな」









その場一帯の空気が凍りついたように張り詰めるのを感じ、キョーコは真っ青な顔をしながら睨み合っている尚とレイノから数歩離れた。
一触即発のこの状態を止めることができない周りの人間達も、固唾を呑んで状況を見守っていた。
尚のマネージャーである祥子は気が気じゃないらしく、今にも卒倒しそうなくらい顔を青くし、尚の隣にいたはずの美森も怯えているようだった。
二人の一番最初の対峙を目の前で見ていた緒方も貧血を起こさんばかりに顔色を悪くし、ピリピリした空気に他のDARKMOONメンバーと椹と奏江はどうしたら良いのかと青い顔をしている。









その時だった。










一陣の温かい風が一同を通り抜け、キョーコは自分の背後に見知った気配を感じ取った。









「女のコの前で喧嘩はよろしくないな」









よく通るテノールの音が、殺伐としていた空気を切り裂いた。
この状況に怯えていたキョーコの震える肩に、後ろからそっと触れた体温は温かくどこまでの優しいものだった。
キョーコは、自分の肩に触れている体温の持ち主を顔を見ずにして理解し、ゆっくりとその容貌を見上げた。









そこにはキョーコが予想した通りの姿があった。













































NEXT→Scene.9 凶暴凶悪なライオン



















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【あとがき】




日付的には変わってしまいましたが、とりあえず7日名義で更新!
明日までは更新可能ですね!
その後はまだ作成途中なので、どうなるか分かりませんが…(汗)


次はようやく真打が登場します!


どうぞお楽しみにw






作成 2008/03/29
更新 2008/04/07



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