【ひらり、ひらりと】










〜 Scene.11 立派な男気 〜




















自分を置いて、さっさと行ってしまった親友の背を呆然と眺めながら、奏江は今、目の当たりにした親友と人気俳優のことを考えていた。









「何よ、あのコったら……自分は生理的に嫌われているなんて言ってたくせに、全然話が違うじゃないの!」









某カラオケボックスで話した過去を思い出しながら、奏江は大きな溜息を吐いた。









「おい……」









奏江のすぐ隣で、小さな少年が声をあげたのだが、当の奏江は自分の思考と睨めっこ中の為か、その声は届いていないようだった。









「おいっ!奏江っ!」









少し声を荒げてもう一度声をあげると、奏江はハッとして辺りを見回したのだが、その声の主が見当たらず首を傾げると、声の主は少し不機嫌そうに眉を寄せながら、奏江の右手を思いっきり引いた。









「えっ!?」
「こっちだよっ!」









突然強く引かれた手に驚いて右側に視線を落とした奏江は、その声の主の顔を見るなり彼女にはあるまじき大声をあげた。









「ひ、飛鷹君っ!?」
「やっと気がついたか……」









やれやれといった風情で、飛鷹は首を幾度か振り、再び奏江を見上げる。









「どうして、飛鷹君が?」
「どうしてって、俺も招待客だよ」









一応な、という言葉を付け加えながら、飛鷹はそっぽを向きながら答えた。
きっと気恥ずかしいのだろう。それを感じ取った奏江は、飛鷹を刺激しない程度の苦笑を零した。









「楽しんで貰えた………かな?」









顔を逸らしたままの飛鷹を少しだけ屈むように覗き込むと、飛鷹は半分だけ顔を奏江に合わせて、つまらなそうに呟いた。









「楽しそうに見えるか?」
「…………見えないわね」
「情緒のカケラもない大人共に呆れたくらいだ」
「情緒って……」









見た目は社長の孫娘であるマリアと同じ年齢くらいに見えるが、マリア同様に大人社会で育ってきたせいか、かなりマセているし、大人というものを理解している。だからこそ出た言葉なのだろうが、奏江は自分たちの年頃でもそうは使うことはない“情緒”という言葉を使う飛鷹に苦笑を禁じえないらしく、先程よりもより苦く笑ったのだった。









「ところで奏江。お前は何やってるんだ?そのツナギ………いい加減やめたらどうだ?目が痛くなる」
「あ、ごめんね?でもまだお仕事中なのよ」
「なら仕方がないな………あとどんな仕事が残っ……」









腕を組みながら飛鷹はすっと逸らし気味だった視線を向けると、奏江は来ていたピンクツナギの上着を脱ぎ出した。









「お、おいっ!奏江!お前、ココ外なんだぞっ!?」
「大丈夫よ。ちゃんとシャツ着ているから」









年頃の娘が、とやはり実年齢に相応しくないことを思いながら、飛鷹はふいっと顔を逸らした。
例え下にシャツを着ていたとしても、女性の服を脱ぐという行為を見てはならないと、彼は彼なりに考えているようだ。









「これでもう目は痛くないでしょ?」
「でも、それじゃお前が寒いだろう……」









そろりと視線を戻し、飛鷹は上着を脱ぎ腰に袖を巻きつけた奏江をじっと見つめ、何か思い立ったような素振りを見せた。









「どうしたの?飛鷹君?」









自分の上着に手をかけたまま固まってしまった飛鷹の顔を覗きこむが、彼は何も言わないどころか何か苦いものを噛んでいるような表情を浮かべていた。









「何でもない」









飛鷹は掴んでいた自分の上着から手を離し、一度だけ奏江を見上げ、ふぅっと大きな息を吐いた。









「飛鷹君?」
「………………」









子供らしくない溜息だと奏江は思ったが、それも飛鷹の境遇を考えたら仕方がないことだと、一人納得しつつ、先程までの飛鷹の行動を振り返った。










どれもこれも子供らしくないと思う。
言うことも、することも何もかも。









「奏江。俺、すぐにお前よりでかくなってやるからな」
「え?」









予想だにしなかった言葉を掛けられて、奏江は一瞬戸惑ったが、それでも飛鷹が至極真剣に言ったことだということを理解し、それを問い返すことはしなかった。
そして、ふいに先程、飛鷹が見せた行動を思い出す。

そう、彼は寒いだろうと言いながら自分の上着を脱ごうとしていたのだ。
それは何の為か、そんなことは考えるまでもなかった。









「立派な男気ね」









誰にも聞こえない程度で呟いた奏江の声は、ひらりと舞う桜の花弁のように風に流され、飛鷹に届くことはなかった。









「おい?」









何も言わない奏江を不審に思ったのか、飛鷹はぶっきらぼうに呼びかけた。









「何でもないわ」









奏江は飛鷹の“立派な男気”を純粋に受け止め、花の咲くような笑顔を見せた。

もちろんこの奏江の笑顔に、飛鷹が見事に赤面したのは言うまでもないことだった。














































NEXT→Scene.12 風にさらわれた決意



















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【あとがき】




飛鷹君×モー子さんの小話でしたvv
飛鷹君はきっとかなりイイ男になると思うんですv
彼みたいな純情な少年は良いですねぇ〜★
成長が楽しみですv


では、次回もどうぞお楽しみにw






作成 2008/04/02
更新 2008/04/22



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