【見つめて、見つめられて】




























(うーん…本当に綺麗な顔をしているわ…)









切れ長の黒曜石の瞳
双眸を飾り立てる長い睫
薄く形の良い唇
シャープな輪郭線

決して女性的ではない容貌
世間では男前と評判









(男前は男前で間違ってないんだけど…私は、美しい顔…綺麗な顔…かな?)









先程から飽くることなくじっと見ている。
先輩の顔を不躾に見つめるのは、失礼に当たるのだろうけど、目を奪われるのだから仕方がない。










そんな自分勝手な解釈に納得する私。

じっと見つめていたのが悪かったのか、黒曜石の瞳とかち合った。









「何?」
「はい?何がです?」









我ながら間の抜けた返事。









「何がって、君がじっと見てるから…何かと思って」
「何でもないですよ」









貴方は首をかしげながら、私の瞳を覗き込む。









「そうなの?」
「はい」









そう、ただ…









「見ていただけです。綺麗な顔だなって…」









すると貴方の顔に僅かに朱が刺した。
あまりに予想外のことで、私はつい言葉に出してしまった。









「敦賀さんでも照れるんですね」
「そんなにじっと見られて、はっきり…言われ…れば…」









あれ?語尾まで怪しいですよ?お兄さん。
そんなに照れること言いましたっけ?









「毎日人に見られているのに………ですか?」
「それはそれ。これはこれ」









ん?それってどう違うの?









「よくわからないです。それじゃ…」









すると貴方は、照れていた顔をきゅっと引き締めた。









いつも通りの敦賀蓮
いつも通りの貴方









「え…?」









次の瞬間。私は声が出なくなった。
声を出させて貰えなくなった、というのが正しい。









じっと透き通った瞳が私を捉える。









私の瞳も
私の身体も
私の声さえも









私を捉えていた瞳がふと緩んだ。
全身を拘束していた呪縛が解かれ、私は漸く言葉を発することができた。









「な…んですか……?」









その声はあまりに情けない。









「見ていただけだよ?君の可愛い顔をね」

「なっ……」









何て顔をしながら
何てコトを言うのだろう









ああ、分かった
ようやく分かりました









貴方もこんな気持ちになったんですね
貴方もこんなむず痒くてどうしようもない気持ちに堕ちたんですね。









きっと今の私の顔は、さっきの貴方よりも紅いはず。
きっと今の私の声は、さっきの貴方よりも怪しいはず。









「た、確かに…“あれはあれ。これはこれ”ですね…」









貴方に聞こえるか聞こえないかくらい小さな声で確認する。









これは恥ずかしい










じっと見つめられて










その理由が









“ただ見ていただけ”









なんて









「やっぱり貴方は意地悪ですね…」
「なんで?」

「私がしたことをやり返してくるなんて…」









すると貴方は笑った










春のような柔らかい笑顔で
貴方の本当の笑顔で









「君が俺をじっと見つめている前から、俺は君を見つめていたんだけど?」

「気がつかなかった?」









心臓が跳ね上がった。
「そんな恥ずかしい台詞をさらっと言わないでください」と訴えながら、
私は顔だけでなく、声も心も紅く染まった。









気がつきませんでした










…貴方の瞳に









だって私は










…貴方を見つめるのに精一杯だったから









“見つめているつもりが、見つめられていたなんて”





























END...





















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【あとがき】




過去に拍手に掲載したSSです!
今頃になってこちらにて公開(………遅すぎやん)


結構前に書いたものだけあって、今とはちょっと書き方が違うような気が…


まぁ、気のせいでしょう!






作成 2007/12/06
更新 2007/12/06



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