【はたから見れば】






























 落ち着いた部屋のソファには、背の高い青年が足を組んで優雅に腰掛けている。静かに本を読む彼の元に制服姿の少女がやって来て青年の隣に座り、ソファの上にちょこんと正座して彼を見上げた。









「ねぇねぇ。」









 少女が話しかけると青年は本を閉じ、少女の方を向いて答えた。









「何かな、お嬢さん?」
「今度、浅草に連れてって!」
「浅草?」
「うんっ!」
「浅草って…、世間一般の女子高生はそんなとこ行きたがらないと思うけど。」
「いいも〜ん。私、世間一般の女子高生じゃないも〜んだ! ねぇ、お願い!」









 少女は両手で青年の腕を掴み、すがるような表情で訴えた。









「行きたい行きたい行きた〜い! 連れてって連れてって連れてって連れてって〜!!」
「わかった、わかったから揺らすなって!」









 掴んだ腕をぶんぶん振り回しながら訴える少女にさすがに青年も勘弁し、軽くため息をつきながら言った。









「…わかったよ。じゃあ、今度の土曜日に連れてってやる。」









 その言葉を聞いた少女は満面の笑みを浮かべ、青年の首にぎゅっと抱きつきながら言った。









「ホント? やったあ! お兄ちゃん大好きっ!!」








「カット!」








 撮影所に監督、新開の声が響き渡り、スタッフにどよめきが広がった。演技派として知られる敦賀蓮と京子には珍しく、もう4度目のNGだ。








「キョーコちゃん、さっきも言ったけど、もっとぎゅーって抱きついてもらえるかな。設定はちゃんとわかってるはずだろ?」
「兄の恋人に対して次々と呪い付きまとうくらい、ブラコンの妹…です。」
「よろしい。蓮もだ、可愛がってる妹にしてはなあんか不自然だぞ。」
「はあ…。」
「…ちょうどお昼の時間だから、休憩にしよう。撮影はそのあと再開。今度は一発で決めてくれよな。」









 そう言って新開は手を叩き、









「よし、休憩だ! 再開は1時半から!」









と言うと、撮影スタッフ達は散り散りになっていった


























* * *


























「監督、さっきのテイク4は俺はあれでも良いと思ったんですが、やっぱりダメなんですか?」
「キョーコちゃんが抱きつくとき一瞬躊躇したのわからなかったか? そんなんじゃお前、ずっと助監のままだぞ。」
「すみません…。あれ?」








 少し遅れて食堂に来た新開と助監督の青木は、ある光景を見て足を止めた。それは向かい合って座り昼食を取る、蓮とキョーコの姿。この撮影現場でも二人の仲の良さは知られていたが、食事の時はそれぞれ同性の共演者と一緒に取るか、蓮のマネージャーと三人でだったので、二人きりで食事をするのを目にするのは初めてだった。
 新開と青木の位置から蓮とキョーコの会話はほとんど聞こえなかったが、とても楽しげな様子に青木は口を開いた。








「監督、以前の京子ちゃんって、敦賀君のことあまり良く思って無い様子でしたよね。」
「ああ、確かに…。」








 それは一年ほど前のこと。同じく新開が監督を、青木が助監督を務めた蓮主演の映画で、彼らはまだデビューしてもいないキョーコに会った。そしてその現場でカメラの前に立ったことも無い素人であるキョーコが、その演技で主演のアイドル松内瑠璃子を矯正してしまったのだ。
 そして現在、そのとき感じた通り、脅威のスピードで演技力を身につけたキョーコに、新開は惚れ込んでいた。








「当時のことを知ってる者としては、今の光景って何だか信じられませんよ。『DARK MOON』では敵対する役柄でしたけど、裏ではあんな感じだったんですかね。」
「『DARK MOON』ね…、あれは良いドラマだったよなあ。キョーコちゃんもあれで知名度が随分上がったし、彼女を見出した緒方監督は大したものだよ。」
「ひょっとして二人、付き合ってるとか?」








 青木の言葉に、新開はもう一度談笑する二人を見た。楽しそうに話すキョーコに、蓮が穏やかに微笑みながら頷いている。その表情に、新開はある確信を持っていた。








 以前の蓮には、あるものが欠けていた。だが、恋愛が主体でない作品ではそれが表面に出ることは無く、他の部分でそれをカバーしてしまうほどの演技力を蓮は持っていたため、自ら指摘することは無かった。
 だが、その欠けていたものが『DARK MOON』にはどうしても必要だった。嘉月が美月を『愛おしい存在』と認知するようになったあのシーンを見たとき、雷に打たれたような衝撃を覚えた。それまでの敦賀蓮とはまったく違う表情、それを呼び起こしたのが誰であるかは、この映画の撮影に入ってすぐに気付いた。
 しかし、同時にその欠けていたものを喚起させた張本人についても気付くものがあった。彼女もまた、あるものが欠けていたのだ。

 新開は再び青木の方に向き直ると、ニヤリと笑いきっぱりと言い放った。









「お前、やっぱり当分は助監のままだな。」









 呆然とする青木を尻目に、新開はスタスタと蓮とキョーコの座る席へと歩いていった。








「ごちそうさまでした! 敦賀さん、ちゃんと全部食べてくださいね? 社さんにもきっちり念を押されましたし。」
「はいはい、わかってますよ。君こそ撮影が再開したら、今度こそ一発で決めて欲しいものだね。」
「うっ…。そう言いますけど敦賀さん、貴方だって監督に注意されてたじゃないですか。そちらこそ宜しくお願いしますよ!」
「ふ〜ん、俺に抱きつくのはもう勘弁? やっぱり俺とは敵対する役の方がやりやすいのかな?」
「え、え〜っと、そういうわけでは…。」
「お二人さん、ちょっと失礼。」








 蓮とキョーコが声の方を見ると、何やら意味ありげな笑みを浮かべた新開が立っていた。見上げる二人の顔を交互に見やると一言、満面の笑みを浮かべて言った。








「本番もそんな感じで頼むよ? 二人とも。」








 驚いた二人は顔を緒見合わせた後、同時に「え?」と返したが、何も言わずに新開は背を向けて青木の方へと戻っていった。
 あの様子じゃ青木のように付き合ってると思うものが大半だろうな。今回は二人が恋人同士の役柄というわけじゃないが、あの雰囲気ならこの映画としては自然だろう。
 何しろあの二人の演じる役柄は、「はたから見ればまるで恋人同士のような兄と妹」なんだから。





















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【あとがき】




【Rainbow Mind】 あゆすたー様から頂きました相互記念の小説ですv


実は私のほうから言い出した企画(と言っていいのでしょうか?)
でまだ私の献上文は出来上がっていない状態です(泣)
あまりに楽しくてつい長くなってしまっているため、なんとか削りつつ
加えつつ(←意味なしですよね・汗)せこせこと頑張っています!


あゆすたー様!もう少しだけお待ちください!
長くなってしまったらごめんなさいm(__)m


兄妹設定の蓮キョ(演技)vvとても素敵ですvv
自分も前に拍手で似たようなシチュで書きましたが、
全然印象が違います!素敵過ぎる!可愛過ぎる!


本当にどうもありがとうございましたvv
そして、本日アップさせていただきましたvvv


もう嬉しくて何回も読みましたが、アップした後、また読みます!
ほぼ100%私信のようなコメントですみません(><)


あゆすたー様vこれからもよろしくお願いしますvv







作成 2008/03/30
更新 2008/04/04



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