【禍福は糾える縄の如し】
ある日、仕事が早く終わった俺は1人でLMEの廊下を歩いていた


「えっぐ・・・うっ…ふっ・・・」


壁の向こうで誰かの泣き声が聞こえる。 この壁の向こうは確かラブミー部の部室がだったはずだ。
なにかあったのだろうか


コンコン
「最上さん?」
「うっ…敦賀さんですか?」
扉を開けた瞬間、目を真っ赤に腫らして泣きじゃくる最上さんが目に飛び込んできた。
「どうしたの?鳴き声が廊下まで聞こえてたよ。」
「すっ…すみませんでした。」
あわてて涙を拭う彼女
「とりあえず、場所を移そう。今日はもう上がったんだろ。俺の部屋においで」
そのままにはしておけず、俺は、泣きながら頷く最上さんを自分の部屋へつれ帰った



「それで、君はさっきどうして泣いてたの?」
家に帰ってリビングに入り大分落ち着いた彼女に問い掛けた。
きっちりと正座をしてテーブルの前に座った彼女は少し顔を赤らめながら話し出した
「お恥ずかしい話なんですけど」
「聞くよ。どんな話でも。だから話して」
「はっはい。…あるCMのオーディションを受けたんです。役は元気でおてんばな女子高生で、私なりに頑張って、モー子さんにも太鼓判おされたのに…」



『あーちょっと君、君さ、いいよもう。』
『えっどうしてですか?』
『だって今どきの高校生なんだからさ、もう少し色気がないとねー』
『えっ?でも役は元気な女子高生で』
『そのほうが視聴者受けいいし、少しは考えてよ。まっどうせ君おちるけどね。花がないんだよ、その辺にいる子でも今時もっとさー。はっきり言って向いてないんじゃないの?』



「って。…敦賀さん、やっぱり私には色気も花もないんでしょうか?」


誰だよ、そんなこといった監督は!琴南さんが認めたのなら、演技も役作りも完璧なはずだ。
「俺がどうとは言えないけど。それにしても、その監督…CMでは“元気な女子高生”の役だったね?」
「はい」
「・・・ヘボ監督め。」
「何か言いました?」
「いや。」


「私悔しいです。もっと私に実力があれば・・・。」
さらに落ち込む彼女を見て俺は思わず自分の腕の中に抱き寄せてしまった
「つっ敦賀さん?」
「君に実力がないなんてそんなことない」
「…//ありがとうございます。そんなこと言ってくれるの敦賀さんとモー子さんくらいです」
やはりどこまでもはずすのが彼女である
自分の位置は彼女の親友と同じだと落ち込みそうな気分だったがそんな事は言えない。


「君はこれから何色にも染まれるってことだよ。それに、花がないなんてその監督の目は節穴かな?(君の魅力に気付かないなんて)誰?監督の名前教えて」
「どうしてですか?」
「その監督からオファー来ても受けないから」
「だっだめですよ。そんなこと」
「俺も昔はよく落ちていたんだ。オーディション。」
「は?」
「“人間万事塞翁が馬”ってね。このつぎは大丈夫だよ」
俺がそう言うと、ふわりと笑った彼女はもう、いつもの顔に戻っていた


「私、また頑張ります」
「うん」
ピリリリリ
突然携帯の電子音が鳴った。彼女のだろうか
「あれ事務所からかな?ちょっ敦賀さん、あの・・・離していただけますか?」
そう言ってバタバタとあばれて腕の中から抜け出そうとする彼女を名残惜しげに解放した


『あ、やっとつながった。最上君。』
「椹さんどうしたんですか」
『君にオーディションの話がきてるんだ』
「どんなのですか」
『なんかよくわからないけど、月9のヒロインらしい。突然降板した女優の後釜を決めるらしい。』
「月9ですか?」
『それじゃ伝えたから』と椹さんは電話を切ってしまったようだ。


「よかったね、最上さん」
「でも、まだ受かるって決まったわけじゃないし。それにヒロインだなんて!相手の方に迷惑かけそうで」
まだそんなことを言う。君は本当に実力があるのに
「そんなことないよ。君はきっと大丈夫。自信を持って。」
「そうですか?そうですよね。あたって砕けろですね!」
気を持ちなおした彼女だったが俺はふとある疑問に気が付いた。
「で?どんな話なの」
「えっと、恋愛物らしいです」
恋愛物、彼女がか?
「へー、因みにそのドラマのタイトル聞いた?」
余裕がなかった俺ができるだけの笑顔でそう問うと、なぜか怯え出した彼女
「(ヒイイイー何でこんな時に笑って、?もしかしなくても怒ってらっゃる?)…“ファーストラブ”というらしいです」
「えっ?」
確かそのドラマって…
「なっなにか怒ってらっゃいます?」
「いや、俺と共演してほしかったなって…」
思わず口から出たのはそんな言い訳だった。本音だけども。
「そっそんな恐れ多い。」
「最上さん、俺とするの・・・嫌?」
俺は君と共演したい。君はしたくないのか?
「…いやってわけじゃありませんけど(共演者キラーだもの)」
その言葉忘れないよ。
「いつか共演しようね(恋人役で) 」
「のっ臨むところです(恋人以外の役で)。いつか絶対、貴方に認められる女優になりたいんです 」
もう、認めてるんだけどね。


「それじゃあ、近いうちに共演しようね 」
満面の笑みでそう言い、チュッと彼女のほっぺたに軽く唇をあてた。
しばらくフリーズしていた彼女だったが、我に返った瞬間、
「いいいやああああああぁーーーーー」
と、お約束の台詞が飛び出したのだった。


実は椹さんが持ってきたオーディションは、降板した女優の代わりに急遽、俺の相手役を決めるものだった 。
彼女はもちろん知らない。ながらもオーディション当日、監督絶賛で合格し、そして顔合わせの時に再び「ウエエエエエー 」と絶叫が響いたのだった


「敦賀さん、知ってたんですか」
「さあ?でも君は実力で役をとったんだから(まあ、絶対に受かると思ってたけど。)」
クスッと笑うと闘争心に火がついたのか、「負けませんからね」とこぶしをにぎり顔を真っ赤にした彼女。
そしてその言葉通り見事にヒロインを演じきって見せた


その役とは、俺演じる主人公(先輩)と仲違いしながらも結果的に相思相愛になる後輩の役だったのである。
俺的には役得だったかな?いつか絶対にそれを現実にしてみせるけどね



































Fin







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【あとがき】


苳蕗じゃらし様より 【禍福は糾える縄の如し】


相互記念に頂いたSSです。
突然ご連絡を頂き、ブログにお邪魔すると私宛にSSが更新されていて(驚)

故事成語を盛り込まれるなんてvv
私にはできない芸当ですv

それにしても気になるドラマ共演!(おいおい着眼点はそこかよ・汗)
私の戯言は兎も角として、苳蕗じゃらし様。素敵なSSを有難うございます!








更新 2009/04/13(月) 00:00:01
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